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あなたの娘です

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「もう帰ろうよ」と娘が肩を揺すった。
娘に支えられるように華子はゆっくりと立ち上がった。
娘は金蔵を見て「もう来ませんから、安心してください」と気丈に言った。
気の強いところは華子にそっくりだと思った。
 華子と娘は出て行った。
その後ろ姿を金蔵と執事は見送った。
「よろしいのですか?」
「仮にわしの娘であったにせよ、時間は戻せない。今さら、どうにもならない。あの娘はきっと儂を憎むな」と青木に問うと、
 青木は沈黙した
「それでいい。憎むほど、儂のことを覚えてくれるなら。なあ、青木、自分の心の中にある虚しさが何なのかが、ようやく分かったよ。自分が誰とも繋がっていないということだよ。根なし草のように、ただ、この世に浮いているだけという虚しさだ。でも、あの娘が憎んで覚えてくれれば、いやおうなしにつながるものができる。後で華子のところに幾ばくかの金を届けてやってくれないか。“お前にやるんじゃない、娘にやるんだ”と言って」





作品名:あなたの娘です 作家名:楡井英夫