待たせてゴメンね♪
一旦ホテルへ入ってしまうと、思っていた程には、京平に対しての罪悪感は感じなかった。私って意外と浮気者だったのかしら……? と、冷めた目で自分を思ったりした。 ところが、車を降りて部屋へ行く辺りから、妙な緊張感と不安感をごちゃ混ぜにしたようなものに、更に一種の期待感まで織り交ぜたような不思議な気持ちに襲われた。
今すぐ帰りたいような、その癖このまま行く所まで行ってしまいたいような……。
けれど実際には、私の手はヒロシに握られていて、私がここで帰ると言ってもきっと却下されただろうし、それ以前に、私はきっと帰らないだろうことも自分の中では明白な気がした。
そんなことを考えながら歩いている内に私たちは、その部屋のドアの前に立っていた。
ヒロシがドアを開け、私の背を押した。
私は押されるままに中へ入り、スリッパを履いた。
部屋に入ると、すかさずヒロシが抱き締めてきて、さっきの続きのようにキスをした。私はまた、身体がとろけるような感覚に襲われ立っていられなくなり、ついヒロシに縋りついてしまった。
ヒロシはそんな私を優しく抱き留め、そっとベットへ横たえてくれ、そのまま唇で、私への愛撫を休めることなく、私の頭を撫で、腕を撫で、そして足先から太ももへと手が伸ばしてきた。
私は身体に震えが走るような気がした。私の身体は私のモノでありながら、私の知らない感覚を勝手に味わっている。そんな錯覚に襲われた。
なぜなんだろう? またしても疑問が頭をもたげてきた。
しかしヒロシは、私のそんな気持ちには全く気付かないのか、ゆっくりとした愛撫の手を休めない。
私の下着の中に手が入ってきて、思わず私は、「あぁ〜」と声を出してしまった。
もうその時には、私のあそこが濡れているのは自分でも分っていた。
ヒロシの指先が、私の感じやすい部分をそっとなぞっていく。
「あぁぁぁ……」 「し、痺れるぅ〜〜……」
私は、身体も頭も仰け反らせて、悲痛な声をあげている。
「早く欲しい」
そう言いたいのに、恥ずかしくて必死で堪〔こら〕えている。京平とは明らかに違っていた。京平も、もちろん愛撫はしてくれるけど、それは今思えば独りよがりな、私を喜ばせるためではなく、自分が喜ぶためだった。そう初めて気が付いた。
ヒロシのあそこは、ズボンの上からもはっきりとこんもりとしていた。なのにまだズボンを脱ごうともせず、ひたすら私への愛撫を続けてくれている。
ヒロシの指が私の中へ入って来た。そして中で何かを探すように蠢いている。
そしてついにその何かを見つけたようだ。
ヒロシの指がそこを触ると、私は堪らなくなった。
「ああぁぁ〜〜 い、いきそうぅ……」
「ヒロシィ〜〜……」
「わ・た・し、い、いっちゃうよぉ〜〜 あぁ〜〜」
「ここがカレンのGスポットだよ」
ふいにヒロシが呟いたその瞬間、
「あぁーーーーーーーっ!」
私は身体を硬直させ、快感の極みへ達した。まだ指だけなのに……。
私は肩で息をしながらも、ヒロシにキスをねだった。
ヒロシはやはり優しくキスしてくれて、そして私の顔をじっと見つめて言った。
「どうだい、気持ち良かったかい? でも、まだこれからだからねっ!」
そう囁くと私のおでこにチュッとキスして続けた。
「――それと順番が逆になっちゃったけど、はっきり言っとく。俺は遊びで君を抱いてるんじゃないからねっ」
私はイッた後の、少し朦朧とした頭でヒロシの言葉を聞いていた。
「……ホント言うと、信じないかも知れないけど、京平から君の話を聞いた時に、なぜか胸に閃くものを感じたんだよ。そして君に逢った時、それが何か分ったんだ。俺はずうーっと探していたんだ。本当に俺が愛するべき人を――」
ヒロシは急に照れたように俯いた。
「――正直言うと、今までに何人もの女と寝たよ。でも『違う』といつも感じていた。カレン……。だけど君は違うよ。俺には分るんだ」
そう言うとヒロシは、私の頬を愛しそうに撫でた。
「カレン、すぐには無理かもしれないけど、京平とは別れてくれないか? また君が奴に抱かれるなんて、俺には耐えられないかも知れない」
私はすぐには返事ができなかった。と言うより、この事実をどう京平に話せばいいのか、全く分からなかった。
『話さなくてはいけないのだろうか……?』
でも、もし京平が私を抱こうとした時、急に私が拒んだらやっぱり変に思うだろう。それだけは容易に想像できた。その時になってやっと私は、京平を裏切っていると言う事実をはっきりと意識した。 ヒロシは私に言うだけのことを言うと、今度は私の服を脱がせにかかった。そして
同時にようやく自分の服も脱ぎ始めた。
私たちは生まれたままの姿になって、愛し合った。しかしそれが性欲だけでのSEXなのか、それとも心を伴うSEXなのか? まだ、その時の私には分からなかったけど、ただヒロシが、私の肌に触れるその感覚には常に優しさが溢れていて、私を心から慈しんでくれている――そう感じることができた。
私は蜘蛛の糸に絡め取られるように、ヒロシの愛の糸にぐるぐる巻きにされていく様な、そんな錯覚を覚えた。
ヒロシのいきり立つものを、私の中へぐぐっと押し込んできた時も、私は何かに溢れさせられる気がした。もちろんあそこはウルウルに潤んでいたし、温かいもので溢れてもいたのだけど……。
ヒロシが私の中で動く度に私は嗚咽を漏らし、そしてそれは徐々に泣き声に変わっていった。そんな私の耳元で「愛してるよ。カレン」とか、「好きだよ、カレン」と何度もヒロシは囁いてくれた。今まで聞きたくても、京平からは一度も聞けなかった言葉だった。
私は意識が遠くなるのを感じた。
「アァーーーッ!」
――気が付くと、ヒロシが上から見下ろしている。
「大丈夫かい? カレン」
そう言って、にっこり笑う。
私は一体どうしたんだろう……? そんな私の顔を見て察したらしく、
「気を失ってたんだよカレン。初めてかぃ?」
と、優しくヒロシが聞いた。
私は驚いて、声もなく「うん」と頷いた。
私たちはその後、また何度も身体を合わせ、一緒に高みへ上がっては一緒に果てた。
そしてしばらく抱き合ったまま眠った。
目覚めた時、すぐ横に寝ているヒロシの寝顔を見て、私は幸せを感じた。 ついさっきまでは迷っていたのに、今の私は、すでに京平とは別れることを決めていた。問題はいつ、どういうタイミングで話すか……だった。
ヒロシが目覚めてからその話をすると、ヒロシは自分が言うまで、黙っているようにと言った。京平を傷付けないように話すつもりのようだったから、私は全てをヒロシに任せて甘えることにした。そしてもう京平とのSEXだけは、何としてもしないでいようと決めていた。
その日ヒロシは私をホテルから自宅付近まで送ってくれて、また次に逢う約束をして帰って行った。私は幸せな気分のまま自宅に帰った。