鈍感と無自覚と
「千尋」
「………」
呼び掛けに答えられる程、今の自分には余裕がない。
普段と違って要の方が優位な立場にあるという事もある。
「返事しなくていいから聞いてくれないか」
「………」
もともと返事をする気はない
「俺、嫌なんだ。自分がよく分からない。千尋の言葉に一喜一憂したりする。鼓動が速くなって止まらない事もある。だから、すごく嫌……悪い。お前に話す事じゃねぇよな」
ふざけないでほしかった。
そんなの初耳だ。
鼓動が早まっていくのがわかる。止まれ、こんなの要に聞かれたくない。
要を両手で突き飛ばした。
全てがスローモーションのように過ぎていく。
ふざけるな。
それじゃあまるで、
「好きみたいじゃないですか」
告白する勇気なんてさらさらなかった。なまじの気持ちで要と付き合おうとも思わないが、このまま気持ちを持て余すのも嫌だった。
それなのに。
なんでいとも簡単に崩してしまえるのか。
理性までがたがたに崩されてしまいそうだった。
「千尋、それはない」
引き攣った笑いを浮かべている要を見て余裕を取り戻す。
大丈夫、要は鈍感無自覚が象徴のような人だ。
これからゆっくり気付かせてやればいい。
先に光が見えたようで思わず微笑んでしまった。
-END-
(あとがき→)
「………」
呼び掛けに答えられる程、今の自分には余裕がない。
普段と違って要の方が優位な立場にあるという事もある。
「返事しなくていいから聞いてくれないか」
「………」
もともと返事をする気はない
「俺、嫌なんだ。自分がよく分からない。千尋の言葉に一喜一憂したりする。鼓動が速くなって止まらない事もある。だから、すごく嫌……悪い。お前に話す事じゃねぇよな」
ふざけないでほしかった。
そんなの初耳だ。
鼓動が早まっていくのがわかる。止まれ、こんなの要に聞かれたくない。
要を両手で突き飛ばした。
全てがスローモーションのように過ぎていく。
ふざけるな。
それじゃあまるで、
「好きみたいじゃないですか」
告白する勇気なんてさらさらなかった。なまじの気持ちで要と付き合おうとも思わないが、このまま気持ちを持て余すのも嫌だった。
それなのに。
なんでいとも簡単に崩してしまえるのか。
理性までがたがたに崩されてしまいそうだった。
「千尋、それはない」
引き攣った笑いを浮かべている要を見て余裕を取り戻す。
大丈夫、要は鈍感無自覚が象徴のような人だ。
これからゆっくり気付かせてやればいい。
先に光が見えたようで思わず微笑んでしまった。
-END-
(あとがき→)