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燐がもし悪魔に襲われたら【メフィ燐・アマ燐】

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アマ燐




「確かに、奥村燐を本気にさせろと言ったのはこの僕です。えぇ、僕です。でも、」

不自然に途切れた言葉は、何かを踏みつぶした音と断末魔の声の所為でかき消されたから。
ぐちゃぐちゃと血肉が混ざる音を奏でながら、
地の王アマイモンは無表情で思いっきり己の配下を踏みつぶした。
悪魔の血がアマイモンの頬に当たる。
その血を瞳で一瞥すると、アマイモンは自らの指でその血を拭った。

「可笑しいですね。僕は殺せとは言っていない。半殺しにしろとも言っていない。
それなのに、どうして?」

小首を傾げながら親指を噛み締め、アマイモンはどうして?と何度も呟く。
彼は悪魔が答えようとしているのに、その声を聞きたくもないらしく力任せに踏みつける。
そしてとうとうその悪魔は絶命した。ぴくりとも動かなくなった悪魔。
アマイモンはもうそこに何も存在していなかったように、その場から踵を返した。

「お?」

「あ、」

暫く歩けば、頬に痛々しいほどのガーゼや、頭に包帯を巻いた燐がいた。
アマイモンは自分が動揺しているのが不思議でしょうがない。

(なんで・・・そう、これは焦り・・・?え、・・・うーん何故?)

「なんだ、こっち来てたのか、アマイモン」

怪我をしているのに、朗らかに笑って近寄ってくる燐にアマイモンは無意識のうちに一歩下がる。
そんなアマイモンに気が付くことなく、燐はすぐにその距離を縮めてアマイモンの腕を掴んだ。

「なぁ、アマイモン!夕飯もう食べたか?」

「い、いえ」

「お!良かった!今からメフィストの家で夕飯食べるんだけどさ、お前も来いよ!」

燐の誘いを断ることなど、できるはずがない。しようとも思わない。

「いきます」

アマイモンは自分が即答していることに、後から驚き数度瞬きをした。

「よっしゃ!じゃ、行こうぜ!」

そして燐はそのままアマイモンの手を掴むと歩き出した。
アマイモンの心臓がドクリ、と大きく脈打つ。

「ん?そういやお前、靴結構汚れてるな?泥とかにでもはまったのか?」

「さぁ?どうでしょう?」

「メフィストに言えよ-。あいつケチだけどそんなに汚れてるなら買ってくれるだろ」

「そうですね。あ、燐」

「ん?」

「今度、靴一緒に買いにいって下さい」

「いいぜ!俺がお前に似合う靴、選んでやるよ!」

燐の笑顔に、アマイモンも目元を和らげフワリと微笑した。

「ありがとうございます」