笑撃・これでもか物語 in 歯医者
確かに待合室に入ってみて驚いた。それは上擦った外観とは違って、割りに落ち着いた雰囲気。新刊のマガジンが一杯用意されていて、その上に、壁には最新型の薄型TVが掛けられている。おまけにマッサ−ジチェアまで備え付けられているのだ。
高見沢は元々腰痛持ち。これ幸いにと早速待ち時間を利用して、そのお世話になった。そして高見沢は実に単純。「うーん、なかなかいいじゃない」と、腰の辺りを揉み上げながら早速の心変わり。診察も始まらない内に、このテクノ歯科を気に入ってしまった。
そんな気分も上々になった時に声がかかってきた。
「高見沢さん、中へお入り下さい」
高見沢は呼ばれるままに診療室へと入った。そこには衝立で仕切られた三台の診察兼治療用の椅子が並んでいる。それらは複雑な曲線でデザインされていて、人間工学を駆使して造られていることが伺われる。
「そこで少しお待ちくだチャイね」
高見沢は若い女性の歯科助手に指示されて、今一番奥の治療椅子に座ってる。そして目の前にある診療用モニタ−の画面の映像を眺めている。
それは無声ではあったが、洋画のシ−ンを映し出している。それは何の映画なのかすぐわかった。
「へえ−、スゴイなあ、タイタニックのジャックとローズか……。ディカプリオはやっぱりカッコイイよなあ」
高見沢は画面に見入ってしまった。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊