職業天使。 1st love「とある少年の恋」
とある少年の恋。
『天使だとか、悪魔だとか。
今のご時勢すっかり忘れ去られ、幻想だと吐き捨てられている。
…ただ。見える人には見えるらしい。
恋の天使(キューピット)の姿が―――』
『きゃーーーーーーーーー!!』
夏には暑苦しいカーテンがなびく窓際の席で、女子の黄色い声が聞こえる。
彼女達が手にしているのは、『天使の恋』という今人気の恋愛小説だ。
人間の恋がしたくて地上に舞い降りた天使が、主人公とすれ違いを繰り返しながらも結ばれていく…
そんな夢物語にも程があるふざけた小説なのだ。
その主人公と読者ターゲットの年齢が近いせいもあってか、女子高生に絶大な人気を誇っているという。
「こんなかっこいい天使なんていたら、私一回でいいから会ってみたいなあ」
「分かるー!ていうかもう一生離さないし!」
見ると、4、5人の女子が一冊の本を全員で回し読みしているのだろう。
その先はネタバレだから喋っちゃだめ、とか、あの話見た?とか、口々にその小説について語っていた。
そしてその横の男子の集まりが、所詮夢物語だろ?と茶化しを入れては小さな口論となる。
作品名:職業天使。 1st love「とある少年の恋」 作家名:karigyura