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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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鬼人(きじん)

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【 鬼人 】

 その昔、彼らは“人食い”と恐れられた。
 赤ら顔で体長5m、頭には羊の様な角がある。
 
 西洋では悪魔、東洋では鬼として伝えられ、
彼らにまつわる、恐ろしい昔話は枚挙にいとまがない。

 人類は彼らを地獄の使者と位置付けて来たが、
実際にはカシオペア座・イータ星、第4惑星の鬼人である。



「この宙域は閉鎖空間にされていたはずだが、※五千年前、ここ(地球)で何があった?」
 (※・・・地球時間に翻訳しています)
 鬼人の一人、ナビゲーターのゲポスが資料に目を通しながら言った。

「密猟船・ベネカ号事件だよ。奴らが全てを台無しにしたんだ」
 残念そうにため息をついたのは農業省・派遣の鬼人、ブフスだった。


「十万年以上前から、この星は最高の猟場だった。肉質の良いネアンデルタールが生息していたからね」

「それなら俺も知っている。捕獲しすぎて二万五千年前に絶滅させた食肉用人種だろう?」

「そうだ。それで農業省がネアンデルタールの遺伝子を猿に移植し、作り上げたホモサピエンスを放牧したのさ」

「うまいのかよ。それ」
 ゲポスがチャチャを入れた。

「だから、密猟船が現れたんだよ」
 ブフスは多少ムッとなりながら、話を続けた。

「我々、農業省は、今度こそ絶滅させないように計画狩猟を行っていた。だが、密猟者は後を絶たず、その中の一隻が巡視船と交戦の末、墜落したというわけだ」

「それがベネカ号か」

「そうだ。その際、ベネカ号の電力・供給用の原子炉が破壊され、大量の放射性物質が地球にまき散らされた」

「で、数千年間、ホモサピエンスの採取が禁止されていたんだな」

「ここ(地球)は永久閉鎖扱いだったが、この処の食糧危機でそうもいかなくなったんだ。それに調査したところ、ホモサピエンスは現在八十億匹にまで増えているんだよ!」

「なるほど。それだけいりゃあ、絶滅はしないわな。むしろ間引かないといけない頭数だ」


 鬼人達は、調査船にシールドを貼り、完全ステルス化した上で、地球から大気と海水を採取した。

 事故から数千年も経過しており、調査は形式的なものであったはずが・・・、
 出て来た数値に、ブフスの顔が雲った。

「なんてことだ。あれから五千年もたっているのに、何故かセシウムが検出された」

「て、ことは、とても食肉用には適さないな・・・」

 落胆しながら、鬼人達はカシオペア座・イータ星、第4惑星に帰って行った。


    地球人は食べられなくて済んだのだった。


        (おしまい)