三文字のえりか
生徒会長
学級委員長
北条財閥のご令嬢
私には沢山の肩書きがある。その肩書きは誰もがほしがるような、そんなものが多かった。
人は私を、この”恵まれている環境”を羨んだ。
確かに私はとても恵まれた環境にいると思う。ちゃんと自覚してるつもりだ。でも、私は物心ついたときから幸せと感じたことがない。私はむしろ普通の家庭の方が羨ましかった。
物心がついた頃、まわりの大人たちはとても私に優しくしてくれた。純粋に嬉しかった。でも、すぐに大人たちの汚い企みに気づいてしまった。そのとき私は大人を信じられなくなった。
小学生になった頃、両親はほとんど帰ってこなくなってた。いつも祝ってくれていた筈の誕生日の日にさえ会えなかった。もともと世界を飛び回っていて忙しい人たちだったから、と自分を無理矢理納得させていた。この頃に私は家族愛を忘れた。
中学生になった頃、仲のいい友人ができた。彼女は何でも話せる友達で、所謂親友だった。でもある日、私は聞いてしまった。彼女が私と仲良くしているのは、私の家が金持ちだから今仲良くなって将来良くしてもらうためだと。裏切られた気持ちだった。もう何を信じればいいのかわからなくなってしまった。
誰も私を見てくれない。この北条という姓を捨てたい。でも、その後に残ったたった三文字のこの名前だけを持った私を誰か見てくれるのだろうか。今の私を構成するのは、北条という姓で作られた嘘の自分。
誰か私を見て。ベールを脱いだ、本当の私を。
三文字のえりかを........