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重力

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[重力]

時々、鳩尾の辺りにズンッと重たいなにかが落ちてくることがある。
それは子どもの頃のことを思い出したり、同級生の近状を聞いたときによく起こる現象だ。
コイツが落ちてくるとあまりの重さに前へ倒れてしまいそうになる。
そこで僕は倒れないよう両足に力を入れ、踏ん張り、コイツが消えてくれるまで耐えるのだ。
一体コイツの正体はなんだろう。僕は何かの病気なのか?
誰かに聞いてみたい所だがコイツの事を僕はうまく説明できる自信がない。
きっと「何を言っているんだ、こいつは」そんな目で見られるに決まっている。
コイツの正体がわからないままずっと一緒に過ごさないといけないのかと思うと先が思いやられる。どうせ一緒に過ごすのならいとしい恋人とがいい。そんな人はいないけども。
片山 実 19歳。彼女いない歴 19年。虚しくて仕方がない。
同じクラスのあいつは女の子をとっかえひっかえしていた。
それなのに僕ときたら女の子とまともに話もしたことがない。

    ――――ズンッ――――

あ、また落ちた。

もういいや、そう思って重力に従い前へ倒れる。
ボスンと音をさせて布団の上へ大の字になった。
敷布団って意外と固いもんだ。初めて知った。
目を閉じるとテレビの音がよく聞こえるようになった気がする。
わずらわしく感じて枕元に置いてあるリモコンを手に取り電源ボタンを押そうとする。
しかし手が止まった。テレビは女の裏の顔がどうのこうの言っている。
なんとなく気になったので意識を向けた。
「女はね、嫉妬に生きる生き物なんですよ。友達から知らない人まで、ありとあらゆるものに嫉妬しながら生きている。体の中にぐるぐると黒い物を飼っているのです」
それを聞いて僕は気づいてしまった。そうかそうか、そうだったのか。
気づかせてくれてありがとう。なんとか教授。
僕のコイツもきっとそれなんだろう。
「でもね、ひとだけ訂正させてくれ、なんとか教授。嫉妬に生きるのは何も女だけじゃない。男だって同級生、道端のイケメン、はたまた昔の自分にまで嫉妬するんだ」
そう教授に言ってやり今度こそ僕は電源ボタンを押した。
きっと伝わっただろう。一瞬僕のほうを見た、気がするから。
間違いを訂正してやり満足気に目を閉じた。
なんだか明日からコイツとうまくやっていけそうだ。
拒絶するからダメなんだ。受け入れてやれば僕もコイツも楽になれる。
いつの間にか僕の周りの重力が弱まっている気がした。

作品名:重力 作家名:悠治