だんだんとしぼんでゆく風船は僕に行き先を告げようとはしない。弱々しくはばたく鳥は己の羽の脆さを知らない。ここが終わりを迎えた世界だということに誰も気づかない。みんな目をつぶったまま何事もなく日常を繰り返すだけで何も見ようとはしない。僕のことを見ようとはしない。だから狂ってるなんて言ってやらない。もう朝はやってこない。太陽は沈まない。雪は溶けない。ささやかな音は眠らない。ひび割れた硝子は砕けない。かしいだ塔は崩れない。今にも消えそうなその焔が消えることはない。力込めた右手をもとには戻せない。
はじまりはどこかに置き忘れられていてどうしても見つからない。