僕が直した兵隊さん
戦地に赴いた兵隊の、身体を奇麗に組み立てて。
愛されていたであろう家族の元へ送り届けることが仕事です。
集めて、縫って、くっつけて。
できるだけ”本物”に近づけます。
それでも、材料が足りないときのほうが多いです。
青い瞳がなくなったとある兵隊さんには、美しい空色のガラス玉を取り寄せて使用しました。
頭蓋の一部がなくなった兵隊さんには、かっこよく見えるように名誉の帽子を作ってあげました。
毎日、毎日、これが僕の仕事です。
この仕事で僕はお給料を貰っています。
しかし、僕がどんなに頑張ったところで誰も喜んではくれません。
泣くのです。
泣いて悲しむのです。
僕が苦労して作った”元通り”はやがて土に埋められてしまい、もう一生そのままなのです。
僕が頑張ったところで誰も喜んではくれません。
泣くのです。泣いて悲しむのです
一体何が足りないのでしょう。
一体何が違うのでしょう。
一体何を間違ったのでしょう。
一体誰が悪いのでしょう。
僕でしょうか。
皆が泣くのです。目を腫らせて。
泣くのです。僕は無力です。
僕は大きな勘違いをしていることに気づきました。
傲慢でした。
”元通り”にしていたつもりの兵隊さんたちは、決してなにひとつ元には戻せていなかったのです。
だから誰もが泣くのです。
僕に命は戻せなかった。
僕の直した兵隊さん/2011/07/03/