消毒
尖ったパンプスを脱いで、真っ先に浴室へ。
ぬるま湯で爪先を洗う。かかとを洗う。
念入りに、丁寧に。
ペディキュアが剥がれていないかもきちんと確認する。
柔らかいブラシを使う。少しくすぐったい。
浴室にはレモングラスの香り。
爪先は清涼感で満たされる。少しほっとする。
濡れた足のまま、今度は服を脱ぐ。
髪を結っていたバレッタを外す。
生まれたままの姿。
髪は胸まで長く垂れて。
冷たいシャワーを頭から浴びる。
汗は流れ、ホイップのような泡に包まれて。
もう一度、
今度は温かいシャワーを浴びる。
不安や怒りや悲しみは、
全て泡となって、水となって排水口へ。
消毒は終わりました。
穏やかな気持ちで脱衣所へ。
柔らかなタオルで身体を拭いて、清潔なコットンのワンピースを身につける。
これで、これでようやく私は真っ白になりました。
「こんにちは、お届けものです」
はっとする。息が詰まる。乾いた皮膚からは汗が流れる。
心臓が脈打つ音が聞こえる。説明の出来ないような不快感が私を襲う。
ああ、せっかく!せっかく!
「はい、少々お待ちを」
私は小さく返事をする。
そして、再び尖ったパンプスに足を突っ込む。
瞬間、大声で喚きたくなる衝動に駆られる。
せっかく!せっかく!
荷物を受け取った私はそれを放り投げ、醜い尖ったパンプスを脱いで真っ先に浴室へ。
降りだし。
リピート。
ああ、せっかく綺麗にしたのに台無しだわ
消毒/2011/07/03/