Log①
無題
ごくたまに、ふと時間が空いたとき、取り留めもなく考えることがある。
私は、確かに此処に存在し、呼吸をしている、しかし私は生きているのだろうか。
そんな考えは、忘れたようにしていても、常に私の心の奥底に付き纏い、ふとした時に表に現れる。
肉を断ち、骨を砕く。血が流れる。そんな感触が好きだ。
生きている、実感が得られる。
だからこそ、私は自ら進んで闘いの中に身を置く。より強い者を求める。
そんな私とは対極の位置にあの子はいた。
脆弱でどうしようもなく甘い、いつも誰かに守られる存在だった。
あの子は、自分の弱さも甘さも十分に知ったうえで、それでも構わないのだと笑っていた。
そんな自分だからこそできることもあるのだ、とも。
何故だかわからないが、あの子とは気が合った。
…気が合った、という表現が正しいのかは分からないが、不思議とあの子が傍にいることは苦痛ではなかった。
たわいもない話が、動作が、全てがしっくりと馴染んだ。
いつも、次に会う約束をすることなどなく別れた。
それでも心のどこかで私はあの子を求めていたし、おそらくあの子も私の自惚れでなく私を必要としてくれていたのだと思う。
その日も、いつものように次に会う約束をする事なく私達は別れた。
それでも、今までのように「次」があると私は思っていたのだ。
あの子に会ったのは、それが最後になった。
あの子がいなくなってから、気付いたことがある。
あの子の傍では、常に心に付き纏っていたほの暗い考えは、表に現れることなく、それどころかどこか遠く忘れ去られていたのだ。
あの子の傍は居心地がよかった。闘っているときとは違い、どこかゆったりとした時間。
そう、私はあの子の傍で確かに安堵していた。私は生きているのだ、と。
私は生きていたのだ。
あの子と、たわいもないくだらない話をして、あの子の隣で、私は確かに生きていた。
あの子はどこに行ったのだろうか。
私は今でも、あの子を探している。
2008/10/26
「生きている実感」「失くしてから気付くもの」