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SDSバスターズ~ピエロ退治します~

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<章=ピエロを殴ったその後>

 ゲンは目を丸くしていた。耳元ではフッと空気の漏れる笑いが聞こえた。
『なら、任せた。空に光の玉が上がったら合図だ』
 そう言って、電話は切れた。俺は合図のことえを話しながらゲンに携帯を返した。
 彼は心配そうに大丈夫か? と尋ねた。
「全然。かなり怖い。でも、覚悟決めたんだ。それに……」
 皆が守ってくれるんだろ? 最後の一言は口に出さなかった。まだ知り合って日は浅いが確信が持てた。それに、口に出すのは野暮ってものだ。
「それに?」
 と尋ねた彼に、別に、と言って笑った。同時に合図が上がった。
「行ってくる」
 この後俺はとにかく走りまくった。あいつの気を引くために。
そして、俺らはその巨大な体を傾ける事に成功した。
「和真! 鼻を殴れ!」
 セシルが俺に叫ぶ。俺は傾けられた巨体を時々躓きながら駆け上り、顎のあたりで思いっきり飛び上がった。
「うおおおおおおおおお」
 雄たけびと共に拳を握り、腕を思いっきり引いた。渾身の一発を赤く浮かび上がる球体に叩きつける。球体がグニャリと歪む。
 黒いSDSの頬に水色の雫が浮かび上がり、足元から徐々に消えて行った。
(やった……)
 俺が一安心したのも束の間、自分の状況に顔が引きつる。
 これ、ヤバくね? 支えを失った体は一直線に地上へと吸い寄せられていく。
 さすがにこの高さから落ちたら、ただじゃすまない。折角無傷でSDS倒したのに! 俺は空中で必死に体を動かし、重力に逆らう。だんだんと地面が近づいていく。落ちる、そう思った瞬間、光の玉が俺にぶつかった。
「ぶへっ」
 俺は変な声を出した。玉が当たったおかげで落ちる軌道がずれた。 
 ボフッと音がし、俺の落下は止まった。
 地面に落ちると思った俺は、ギュッと目をつぶっていた。瞼の間から光が見えてきた。目を開いたが、あまりの眩しさに、目を細める。
「ここは、天国?」
 俺がつぶやくと、頭をスパンと叩かれた。
「アホ」
 兄貴の声だった。
 目を開くと、目の前にはその他の四人の顔が見て取れた。
 俺は上半身を起こした。エリーちゃんが、心配そうな瞳で俺を見ている。アリアは相変わらずだが、何故かそれがありがたかった。
 ゲンが俺に手を差し出し、トランポリンからおろした。
「無事で何より!」
 そして、顔に似合わない豪快な笑い声をあげた。
 地に降り立った、俺にセシルが近づいてきた。
 その顔はなんとも言えない、柔らかな笑顔を浮かべていた。
「任務は成功だよ。和真のおかげだ。本日をもって君を正式に対策本部の一員として迎え入れよう」
 そう言って、右手を差し出した。俺は少しためらったが、その右手を握り返した。
 セシルはニッと笑顔を浮かべると、言った。
「それなら、早速準備だ!」
 そう言えば、兄貴の話だとこの人たちは世界中を飛び回っていると言った。きっと、俺も例外ではないのだろう。そうなると、あの家も離れなければならなくなる。
「セ、ボス。それって、これからどっか行くってことか?」
 俺はチラッと兄貴の顔を見ながら聞いた。相当不安そうな顔をしていたのだろう。
 エリーちゃんが、セシルに向かって何か言おうとした。
「ボ、ボス!」
 それを遮り、セシルは言う。
「そうだねぇ。もう任務も終わったし、次の任務がこの国ではないなら、移動だろうねぇ」
 俺は俯いた。エリーちゃんもゲンもおろおろとし始める。それを見ていたアリアが、何か言おうとするとセシルはそれを手で制した。
 そして、悪戯が成功した子供の様な笑顔で言った。
「本当なら、ね? でも、和真はこのチーム唯一の学生だ。君が卒業するまでは、この国から移動はしないよ」
 もう上にも言ってあるんだぁ~、と鼻歌交じりに言う。
 その言葉にエリーちゃんもゲンもホッと胸をなでおろす。かすかに、アリアも笑顔を浮かべた、ように見えた。
「ほ、ほんとか!?」
「ほんと、ほんと」
 俺は頬が綻ぶのが自分でも分かった。
「ようこそ、SDS対策本部へ」
 ゲンとエリーちゃんが抱き合い喜ぶ。
 こうして俺はSDS対策本部の仲間入りをしたのだった。
 帰り道、俺は思い切ってゲンに尋ねた。
「俺が女子に黄声(きせい)をあげられた理由? それはあれだ。また別のお話、だよ」
 俺の頭をぐしゃぐしゃして、笑った。
 

 余談だが、その日のバレンタインでもらった数を報告しておこう。(山田調べ、男女別)
 ・鈴木和真……十八個(学校内四位、学年三位)
 ・鈴木雅人……二十二個(学校内三位)
 ・天野(セシ)神(ル)……二十五個(学校内一位、学年一位)
 ・逢(エ)河(リ)愛(ー)理……二十個(学校内四位、学年一位)
 ・佐久間浩介……三個(学校内ランク外)
 ・菊野陽詠……二十四個(学校内二位、学年一位)
 ・和泉(いずみ)笹音(ささね)……二十一個(学校内三位、学年二位)
 ・常陸(ひたち)みゆき……二十五個(学校内一位、学年一位)
 ・田口(たぐち)秋(あき)……二十三個(学校内二位、学年二位)
 ・山田元気……十個(学校内八位、学年五位)
 ・一度来校したメイド服の少女……四十三個
 ・佐久間源外……四十八個

 対策本部のメンバーが日本で活動するうちにメンバーが増えてゆくのだけど、それはゲンの言葉を借りると「また別の話し」だ。