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天気予報はあたらない

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 「マジかよ……。」

 見てしまった、と思った瞬間に自分の中にある防衛本能が働く。次にどうするべきかを考えるよりも先に、体は階下へ向かっていた。
音をたてないように、かつ、すばやく階段を下りていく。
 探しになんてこなければよかった、とひどく後悔する。教室から出て行った二人の険悪そうなムードから、取り返しのつかないほどの大喧嘩になっているのではないかと変に勘ぐってしまった、自分をひどく恨む。

 ――そんなわけないじゃん。

 心配して損したといえば、その通りだ。あの二人のことだから、すぐに仲直りして帰ってくると、なぜ思えなかったのだろう。

 俺一人、馬鹿みたいだ。

 二人の間に割って仲裁し、仲を取り持つことができるのは、自分しかいないなんて、ひどい錯覚。

 「俺、必要ないじゃん。」

 自嘲の言葉ばかりが、口をついて出る。思いあがっていた自分が、ひどく滑稽で、悔しい。まだ、出会って三年しかたっていないのに、あの二人の間に割り込もうなんてできるわけなかったのだ。
 今日はっきりしたことは、俺なんかいなくたって、二人は成立すること。そして、二人の世界には、俺が入る隙間がないということ。
 ならば、俺ができることはただ一つ。知らなかったことにして、今まで、を保つこと。

 ならば、俺が願うことはだだ一つ。自分の居場所が、あの二人の間に居続けられますように。
 ならば、俺が隠すべきことはただ一つ。この、忌々しい、居場所を守ることへの執着心を。
 ただ、ひたすらに、ひたすらに。

 それからの日々は、俺にとっても試練の連続であった。いつもよりも、二人の会話に割り込むことも多くなったし、必ずといていいほど、どちらかと居るようにした。
 もともとあった、空気読めないキャラもあいまって、それはごく自然に任務を遂行していく。

 ――完全に、お邪魔虫だな。

 もし、これが二人がつきあっているとしたら、嫌われて当然だろう。
 でも、日々を送っているうちに、一つ、わかったことがある。二人の空気感が、なんかぎこちないのである。お互いに、気付かれないように装っているが、あきらかに以前とはちがうしこりのようなものを感じた。

 これはもしかしたら、俺は生き残れるかも知れない。居場所戦争という、この戦場を。
 なんて思ってしまった、俺は浅はかだ。あんなことしなければ、こんな懺悔も必要なかったのだろう。

 だから、俺は、最低な人間なんだろう。

作品名:天気予報はあたらない 作家名:雨来堂