カエルの親子
私の娘はカエルだ。
クリクリとして潤んだ瞳や、雨の日には歌いだしそうなほどにはしゃぎまわる姿、そして今や黄緑色のなめらかなからだをしている。
私の娘はカエルだ。
雨の中、私たちは手をつないでいた。娘の小さな左手を握り、傘を掲げ。娘は楽しそうだ。
「きょうね、おえかきしたの」
「そうなの。何を描いたのかしら?」
「パパっ!」
はっきりと、彼女は口を開いた。そこから飛び出た答えは、彼女の様子から想像がついたのだけれど。
「ちちのひにプレゼントしましょうって、せんせいがいってたの」
「そう、きっとパパは喜ぶわ」
「ほんと?」
笑顔が絶えない彼女は、今にもスキップして駆け出しそうだ。そうならないように、私はしっかりと彼女の手を握り締める。
「パパがね、こんどのおやすみにおでかけしようって」
「よかったわね」
「うん、それでね――」
私は、彼女が父親を、あの人を語るその顔を知っていた。別に直接見たことがあるわけではないのだけど、知っている。今よりもう少し若い頃、私は同じような顔をして、あの人のことを考えていた。きっと、その頃の写真には、娘とおんなじ顔が写っているのではないかとさえ思う。
カエルの子はカエル、と言うけれど、それならカエルの親はカエル、なのだろう。
そう、私の娘はカエルだ。