洋菓子戦争
ヒトは、愛する者を守る為に、同種類のヒトを無造作に殺さなければならない。
ぼくも、たったひとりしかいないアイツを守る為に、たったひとり“ずつ”しかいないヒトを殺す。
【あるもの】に拘束されながら、ぼくはぼくなりに、ぼくのやるべきこと、『戦争』を繰り返す。
そのことに、幼いながらも、快感を覚えながら。
ぼくの首には、軍の首輪が嵌められている。
時にそれは、ぼくの首を締め付け、ぼくの守るべき人までもを苦しめる。
そして、時にそれは、ぼくの戦場での行いを監視する。
ぼくの腕には、軍の手錠が嵌められている。
時にそれは、ぼくの腕を締め付け、ぼくの行動を全て阻止しようとする。
そして、時にそれは、ぼくの戦場での行いを補助する。
ぼくの足には、軍の足枷が嵌められている。
時にそれは、ぼくの足に負担をかけ、ぼくを束縛しようとする。
そして、時にそれは、いざというとき、ぼくを戦場で囮にする。
ーぼくの身体には、深く皮膚を抉り、筆記体で『監視』『仮の補助』『束縛』を意味する英語が、首、腕、足に刻まれている。
《契約の刻印》。
軍はそう呼んだ。
ぼくは、軍にいいように使える様、“呪術”というもので強制的に呪神と契約を結び、この身体を受け渡したらしい。
ぼくは、それを中止する術も知っているし、呪いを解きたいとも思っている。
しかし、自らの手でその傷以上の傷を作り、契約の刻印を消すこと等、ぼくにはできない。
だいたい、その神とやらが、人間の少々の我慢で契約の刻印を消せる程度の呪いをかけているとは思えない。
つまり、契約の刻印を呪術まできれいさっぱり消す、となると、契約の刻印以上に抉り続け、呪術が抜けきった頃には、その身体まできれいさっぱり抉り尽くされて、死を迎えるのだ。
ーまぁ、呪術をかけられている時点で、死んだも同然な訳だが。
ぼくは、この呪術を解くことはできない。
そして、ぼくは、子供なのに軍に眼を付けられ、呪術までかけられる理由がある。
ぼくは、能力者だから。
…こんなの、事実を並べただけの、つまらないひとりごとさ。
そう、事実を______________。