小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

飛行雲 見つけた

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

 荒廃した世界、焼け焦げた地面の上で、スクラップ同然の私は、動けずに転がっている。

 二キロ先には小山があり、小山の向こうには発射されるミサイルの先端が、黒い山が帽子を被ったように見えた。

 数分後、戦いの音が消え、我々の部隊は全滅した。

 生命維持の為だけに稼動する鉄クズの私は、暗く汚された空を見ていた。

 半日経過、ミサイルが発射された。

 黒い小山の後ろが眩く光、光学処理の負荷を超えた光がカットされフィルターが掛かる。
 日が昇るような燃える炎を吹き、ロケットの先端が空を目指す。
 膨大な熱と光フレアの残像、そして尾を引くような発射煙を残して空へと消えた。

 私は右手の中で潰れたお守りに、残りの電力を全て使い接続した。

 ひび割れた隙間から涙のような液体を流す眼球が、神経細胞を刺激され熱を発する。

 遺伝子情報と残留記憶の中の彼女は、いつも明るい空の下で笑っている。
 
 私が残してほしいと哀願した、たった数分の情報。

「あ、飛行機だ」

 彼女が指差す、その方向に飛行機はいない。

 視覚、電子情報を幾ら使おうが、脳に電気を直結しようが魂は騙せない。

 私は答えた。

「それはミサイルだよ、大丈夫、私も皆もすぐにそっちに行くから。二人で見つけよう」

 彼女は答えた。

「冗談ばっかり」

「冗談じゃない、本気だ」

「こじつけだー……でも、いいなそれ」

「空の見える場所で、式を挙げようか」

「うん」

 きっとそれは天国かな。人工的な夢を見る機械も電気脳も天国に行けますように、私は祈った。

作品名:飛行雲 見つけた 作家名:夕雲 橙