飛行雲 見つけた
荒廃した世界、焼け焦げた地面の上で、スクラップ同然の私は、動けずに転がっている。
二キロ先には小山があり、小山の向こうには発射されるミサイルの先端が、黒い山が帽子を被ったように見えた。
数分後、戦いの音が消え、我々の部隊は全滅した。
生命維持の為だけに稼動する鉄クズの私は、暗く汚された空を見ていた。
半日経過、ミサイルが発射された。
黒い小山の後ろが眩く光、光学処理の負荷を超えた光がカットされフィルターが掛かる。
日が昇るような燃える炎を吹き、ロケットの先端が空を目指す。
膨大な熱と光フレアの残像、そして尾を引くような発射煙を残して空へと消えた。
私は右手の中で潰れたお守りに、残りの電力を全て使い接続した。
ひび割れた隙間から涙のような液体を流す眼球が、神経細胞を刺激され熱を発する。
遺伝子情報と残留記憶の中の彼女は、いつも明るい空の下で笑っている。
私が残してほしいと哀願した、たった数分の情報。
「あ、飛行機だ」
彼女が指差す、その方向に飛行機はいない。
視覚、電子情報を幾ら使おうが、脳に電気を直結しようが魂は騙せない。
私は答えた。
「それはミサイルだよ、大丈夫、私も皆もすぐにそっちに行くから。二人で見つけよう」
彼女は答えた。
「冗談ばっかり」
「冗談じゃない、本気だ」
「こじつけだー……でも、いいなそれ」
「空の見える場所で、式を挙げようか」
「うん」
きっとそれは天国かな。人工的な夢を見る機械も電気脳も天国に行けますように、私は祈った。