CROSS 第13話 『帰投』
山口はオープン式の四輪駆動車に乗りこむと、エンジンキーを差しこむ部分にあたる指紋認証装置に指を置いた。帝国連邦軍所属の軍人なら誰でもエンジンをかけることができるようになっている。
ブルンッ!!!
電動式であるエンジンは、すぐに心地良くかかった。やっぱり動かないかもしれないと思っていた山口は、ほっと一息つくと、妖夢に車に乗るように言った。しかし、彼女はとてもつもなく嫌そうな顔で、
「あなたが運転するんですか?」
と、聞いてきた……。どうやら、山口が運転するのを嫌がっているようだった……。
「……なんで嫌がるんだよ?」
「だって、山口少佐が運転や操縦が下手なのは、異次元中で有名じゃないですか。レミリア・スカーレット様からもらったばかりの高級車を30分以内に廃車にしたり、士官学校のモビルスーツ訓練中に貯水タンクに穴を開けるは、突然シャトルを操縦し始めたかと思えば、プラントのクライン議長が乗ったシャトルに追突事故を起こすはで」
「……そんな昔の話を持ち出すなよ」
「2、3年前からの話ですよ!」
「じゃあ、どうするんだ? せっかく動く車を見つけたっていうのに」
山口は腕時計を指さして言った。この動く車を見つけるのに、20分ぐらい時間を消費してしまっていた。
「私が運転します!」
妖夢はそう言うと、山口に運転席から助手席に移動するようにとしっしっとやった……。山口はこれ以上言い争うのは時間の無駄だと考えたらしく、仕方ないといった感じで助手席へ移動した。エンジンのオンオフは帝国連邦の軍人しかできないが、運転すること自体は、誰でもできる。
「だけど、運転免許持ってるのか?」
「運転免許ぐらい持ってますし、幽々子様の車の運転手もやってますから、少なくとも山口さんよりかは運転はうまいと思いますよ」
「ふん、白玉楼は庭師を運転手としても使わなくちゃいけないほど金が無いのか?」
「……白玉楼は紅魔館のように、帝国連邦軍の強欲な軍人を使っての金儲けはしませんから」
「…………」
「それでは、出発しますよ」
妖夢は四輪駆動車を急発進させた。急発進のせいで山口は舌を噛みそうになった……。
山口と妖夢を乗せた四輪駆動車は、半開きになっていた門から出ていき、山口が指さした方向にある『嵐の祭祀場』へと走っていった。
作品名:CROSS 第13話 『帰投』 作家名:やまさん