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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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卒業ソング

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     【 卒業ソング 】
     
 「卒業式で唄う歌は、蛍の光と仰げば尊しとします」
  頑固な校長が朝礼でそう言った。
 
  これには当然、私たち生徒の間から不満の声が続出した。
 
 「そんなの古いですよ!」
 「私達の思い出になる卒業式にして欲しいでーす」
 
 あまりの不評ぶりに校長先生は切れたようだった。
  
 「それなら君らが勝手に決めなさい。ただし蛍の光は唄うから!」
 プンプン怒りながら校長が演壇を降りた。
 
 生徒の間で大歓声が巻き起こった。
 私も隣のメイちゃんと抱き合って喜んだが、ひとつだけ問題があった。
 
 「卒業式で唄う歌は、やっぱりレミオロマンの3月9日だよね」
 教室に戻った私がメイちゃんにそう話しかけると、
 彼女は即座に否定したのだ。
 
 「エー、卒業式って言ったらやっぱり森山直太郎のさくらっしょ」
 確かに森山直太郎のさくらもいい曲だと思うけど、私はやっぱりレミオロマンが良かった。
 それで、斜め向かいのトモちゃんに聞いてみたところ、
 帰って来た答えは・・・、H2Oの想い出がいっぱいって、古ッ!
 
 それどころか、クラス代表の飯塚さんは松任谷由美の卒業写真を推薦したのだ。
 まあ、卒業写真もいい曲だけど、お母さんの世代じゃないんだからカラオケで唄いなよ。
 
 ためしに男子は何と言ってるかと耳を澄ましてみると、新山君は尾崎豊の卒業を、
 いつもはイジケているオタクどもは、AKB48の桜の花びらたちだ、めぞんの斎藤由貴の卒業だと騒いでいた。
 
 バッラバラじゃん!
 
 クラスの中でもそうだから執行役の生徒会ではもっと激しい論戦になっていた。
 ある者はコブクロの桜を、ある者はEXILEの道、またある者はアンジェラアキのサクラ色を押して譲らなかった。
 
 ついには投票に持ち込まれることになったんだけど、誰でも一度しかない高校の卒業式を、最高の歌で飾りたいと思うのはあたりまえ。
 
 ポスターが破られたり、食券で買収しようとする者が現れたり、ついにはブログで、相手の悪口を言い合う者も現れた。
 
 ダメだよ、そんな事していたら、そんな事していたら・・・。
 
 
 
 「と、いうわけで卒業ソングは仰げば尊しと決定しました」
 校長が、嬉しそうに、宣言した。
 
 
    ――― おしまい ―――