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le matin...

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朝、小さな花束を大事に抱えて、あなたのいる城までの道を行く。
それはまるで王子様の気分。
早くあなたに会いたい。


「―待って…!歩くの…速い…」
ミレイユに言われて、はっとする。
あの人に会いたいと想う気持ちが、いつの間にか早歩きにさせてしまっていたらしい。
「すみません…大丈夫ですか?」
ミレイユは白い息を吐き、自分が見立てた花束を見ながら笑う。
「早くしないとお姫様を他の人に盗られちゃうものね」
早く行きましょ、王子様!…なんて茶化され、先程の自分の心が見透かされたような気がして顔が赤くなるのを感じた。
楽しそうに笑うミレイユの後を追いかける。
ほてった顔に空気の冷たさが気持ち良い。


寒さで身体の芯まで冷えてきた頃、やっと城に辿りついた。
城門の前にいる兵士にミレイユが友達だと告げると、すんなり通してもらうことが出来た。
隊長らしき人に部屋を教えてもらうと、足早に向かう。
―あなたに喜んで頂けるでしょうか…。


部屋の前に辿り着くと、心の準備をする間もなくミレイユが勢いよく両手で扉を開けた。
「クラヴディアちゃん、おはよう!」
その瞬間、目に飛び込んできた光景に声も出せずに固まった。


そこには双子がいた。
ベッドの中で、髪を解いているからわからないが、片方が片方を組み敷いている。
二人とも顔を紅潮させて、呼吸も荒い。
心なしか汗ばんでもいるような………
「二人とも何して…!?」
「すみません、突然お邪魔してしまって。帰りましょう、ミレイユ。」
手でミレイユの目を塞ぎ、何も見なかったかのように笑いながら扉を閉めた。


「―おや、もうお帰りですか?」
僕たちのために用意してくれたのであろう、ティーセットを手にした先程の隊長らしき人とすれ違う。
「すみません、ちょっと急用を思い出して…。
…あ、この花、どこかに飾ってください。」
持っていた花束を彼に渡し、ミレイユを引っ張って城を出る。


城門を出たところで今まで黙っていたミレイユが口を開く。
「アキヒト、痛いよ?どうしたの、急に…。
せっかく、クラヴディアちゃんにお花持っていったのに…」
首をかしげて僕の顔を見る。
「…ミレイユは何も感じなかったの?」
「え?何が??」
訳がわからないという風な表情を浮かべる。
-さっきのは見間違い…?いや…でもミレイユの反応を見てると……
ふと気づくと、黙りこくってしまった僕の顔をミレイユが心配そうに覗き込んでいた。
そんなミレイユの頭を優しく撫でる。
「ミレイユにはいつまでもそのままでいて欲しいな。」
「?
ミレイユは変わらないよ?」
ミレイユが屈託のない顔で笑う。
その笑顔につられて僕も笑う。



あなたの傍には初めから本物の王子様がいたんだ。
どんなに頑張ろうとも所詮僕は偽者にすぎない。
本物はなれない。

僕は顔では笑いながら、さっきの光景が脳裏に焼き付いて離れず心で泣いていた。
作品名:le matin... 作家名:マユ