玄関
壊れる音がするのです。
さっきから、
ぽとり、ぽとり、と。
なにかが落ちる音がするのです。
きっと
限界だったのでしょうね。
ほら、
さっきから
取り乱して叫んでいる、
貴方の声すら聞こえないのです。
眼の前に
あるはずなのに
聞こえないと言うのは
こんなにももどかしい事なのですね。
そうそう、
さっきから肘から先が無いのです。
腕が見当たらないのです。
眼の前で
震えている貴方を
慰めてやりたいのに、
腕が見当たらないのです。
視界がぶれる。
今度は
立てなくなりました。
太股から離れている
肌色の棒は何なのでしょう。
貴方は
ますます取り乱して、
泣き喚いています。
お願いだから泣かないで、
と、言いたいのに声が出ない。
真っ暗、衝撃。
床の冷たい感触。
活動停止。