小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ハト太郎

INDEX|1ページ/1ページ|

 
オレ様はハト太郎。ハト時計に住んでいるハトだ。いや、本当はハトではないんだが、ハトだ。
 ハト時計、って知っているか?
 森の中のかわいいお家、みたいな形をした時計で、オレ様が三角屋根の小さい窓から顔を出して時間を知らせてやる、というとても親切な時計のことだ。
 ところでさっきも言ったが、オレ様は本当はハトではない。カッコーという鳥だ。だから時間を知らせるときも「カッコー」と鳴く。なのにオレ様の名前はずっとハト太郎だ。それはなぜかと言うと、この家に住んでいるさきちゃんという三才の女の子が、オレ様をそう呼ぶからだ。
 さきちゃんは、オレ様が時間を知らせるため外に出るたび、オレ様をゆびさし「ハト太郎出てきた!」と叫ぶ。ハト太郎と呼ばれることは本当はうれしくはないのだが、さきちゃんがとてもうれしそうなので、しょうがない、そのままにしている。

 ある土曜日のこと。お母さんが熱っぽい顔で起きてきた。まだ朝の六時前。休みの日なのに早起きだなあと思っていたらお父さんも起きてきた。どうやらお父さんは今日は仕事に出かけるらしい。「母さんが風邪の時にすまないけど、今日はどうしても仕事に行かなければいけないんだ」と言っていた。そうか、お父さんもお母さんも今日は大変なんだな。
 お母さんはお父さんを送り出すと、また部屋に戻ってひと眠りするようだ。風邪だもんな、しょうがない。
 しばらくすると、なんと今度はさきちゃんが起きてきた。子どもって休みの日は早起きだな。いつもはお母さんに起こされても、幼稚園に行くぎりぎりまで寝ているのに。
 さきちゃんは、半分寝ぼけたみたいな顔でトイレに向かったようだ。そっか、がまんできなかったんだな。
 と思っていたらトイレからさきちゃんの泣き声が聞こえてきた。どうした?おもらしでもしちゃったか?
 さきちゃんはトイレでしばらく泣いていたけど、お母さんは気づいてくれないみたいでなかなか起きてこない。
 しようがない、ここはオレ様の出番だな。
 もう六時になることだし、オレ様が思いっきり鳴いてお母さんを起こしてやろう。
 オレ様は大きく息を吸うと、いつもより大きく「カッコー、カッコー、カッコー、カッコー、カッコー、カッコー」と鳴いてやった。
 すると、その大声にびっくりしたようにお母さんが部屋から出てきた。さきちゃんがトイレで泣いていることにもすぐに気がついたみたいだ。よしよし。
 お母さんはトイレからさきちゃんをつれてきて、「ごめんね」って謝った。
 着替えてスッキリしたさきちゃんは、もう一度お母さんと眠るようだ。
 オレ様がその様子を窓の中からながめていると、さきちゃんはオレ様の方を向いてにっこりと笑った。
 「ハト太郎、あじがとねー」
 
作品名:ハト太郎 作家名:きこ