君色
海の色?
いいえ、空の色
『 君色 』
海の見える丘の上に立って、君を思った。
目の前に広がる水の群れは、どこか懐かしい音を立てながら揺れていた。
海と空の境界はとても曖昧になっていて、もしこの果てへ行けば、
海から空へと歩いていくことができるんじゃないかと思う。
君がのった飛行機は、空に飛び立ったままだ。
その線のない境に行けば、君もその辺まで散歩に来ているのかもしれないと、
柄にもないことを思ってみたりする。
風はさらに強くなってきて、乱れる髪を整えるのを諦めた。
海に来るときは必ず着る白いワンピースも風で裾が広がった。
周りにある音は、波と風にさらわれる。
それがいい。
それくらいの方が落ち着く。
それくらいの方が、今の私にはあっている。
空と海の間を風は、自由気ままに駆け抜ける。
風が通るその道を海と空は、互いに見詰め合ってどんな気持ちでいるんだろう。
それともやっぱり、どこかで繋がっているのだろうか
私は海を羨んだ。
ただ、そこにありながら空をつなぎとめている海が。
そう、私は空と海のように君と溶け合った存在になりたかった。
でも、出来ないのならばせめて、君の色になりたい。
『海が青いのは空と溶けたから 私もあなた色に染まっていく』