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タチバナ キサヤ
タチバナ キサヤ
novelistID. 27429
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君に似てるもの

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今日も日差しは強くて。
でも、それもまぁいいかと思う。


『 君に似てるもの 』


その日もひどく暑い日だった。
ようやくもらった休憩時間に彼は一人木陰で涼んでいた。
さっきまで彼がたっていたグランドには、陽炎が立っていてさっきまで自分は
本当にあそこに居たのかと疑いたくなった。
まわりを見渡しても同じく練習に参加していたものは皆、暑さの中で参っていた。
部員達の声のしない校庭は、妙な静けさがあってただ虫の声だけが響いていた。

(このまま、休憩がつづけばいいのにな・・・)

暑さのなかでどこか溶けてしまった思考でそんなことを考える。

(きっとすべて悪いのはこの暑さのせいだ。)

すべてを暑さに責任転嫁して、彼は地面に揺らぐ陽炎から目をそらした。
すると、校庭の横の黄色い花に目が止まる。
その花は堂々と太陽に向かって背を伸ばし、誇らしげに咲いていた。
向日葵だった。
彼は、その向日葵たちの様子をみて笑った。

(あいつみてぇ)

そのわずかな微笑を横にいた彼の友人が目ざとく見つけた。

「・・・お前、今笑った?」
「いんや?」
「嘘付け。笑ってるじゃないか、何か面白いことでもあったか?」
「別に」
「じゃあ、ついに暑さにやられて頭がおかしくなったか?」
「そんなわけないだろ?」

彼はごまかしながらも、笑いが止まらない。
側に居た友人は、そんな彼を気味悪そうに見ていた。
すると、そこに練習再開の声が聞こえる。

「さて行きますか」
「ちょっと、待てよ。何がおかしいんだよ。気持ち悪いぞお前。」
「何とでも言え。置いてくぞ。」

彼らは木陰から立ち上がって、日差しの中へと身体と動かした。
そんな、彼らの何気ない様子を、花壇の可愛らしく威張った向日葵だけが眺めていた。


『日差しの中の向日葵は君の笑顔を思い出させる。』