君までの距離
“偶然”じゃぁ寂しい。
でも、“奇跡”はイラナイ。
君に会うことは、“必然”だから。
『 君までの距離 』
桜が散る。
白い花弁がハラハラと音もなく舞う。
彼女は新しい制服に身を包み、これからの3年間の通学路を歩いていた。
彼女の横を希望に満ちた顔で走り抜ける男子生徒がいる。
友達同士で楽しそうに話す女子生徒。
花の香の風。
鳥のさえずり。
春の暖かな光が人を優しく包み込む。
校門の前まで来る。
腕章を付けた在校生達が新入生に声をかえている。
『クラスの張り出しを見て、教室に入ってください。』
そこを通り抜ける。
明るい校庭は静かだ。
掲示板の周りは人だかりができている。
白い紙に書かれた自分の名前を見付けては、歓声が響きわたり、音が絶える事はない。
(見えない・・・・)
彼女は背伸びをする。
彼女のすぐ前の人の群が動く。
不安定な姿勢の彼女に、別の生徒の肩があたる。
周りの空気が動く。
彼女の視界が変化する。
そのまま彼女は後ろに倒れ込んだ。
「大丈夫?」
閉じていた瞳を彼女が開くと、彼の顔があった。
驚いた彼女は急いで我が身をたてなおした。
「ご、ごめんなさい。」
彼女は、自分を支えてくれた彼に謝った。
「気にすることないよ。君が悪い訳じゃないし。」
「でも・・・・」
「いいって、俺、丈夫だし。」
彼は、彼女に笑い掛け、彼もつられて笑った。
「君、何組?」
「Cクラス」
「そっか、一緒だ。よろしくな。」
彼を呼ぶ声が聞こえる。
彼はそれに答え、彼女に向き直る。
「じゃあ、また。」
「えぇ。」
彼女は彼の走る背中を見つめ、自分もまた、歩き出した。
“運命”は信じない。
“偶然”じゃぁ寂しい。
でも、“奇跡”はイラナイ。
君に会うことは、“必然”だから。
きっかけは、小さな事。
あなたが忘れても、私はずっと覚えてる。
それで、いいの。
『モノクロの世界で、あなただけがフルカラー』