ミシンと蝙蝠傘
蝙蝠傘は文字どおりのお天気屋で、自慢のつばさを、天気の良い日には開いて、雨の日には閉じて、飛ぶ。風の日には飛ばない。骨が折れるから。
蝙蝠傘にはミシンの奥さんがいる。奥さんはとても腕の立つお針子さんで、いつだって村の御婦人方のドレスラインの流行は彼女の指先から始まる。
天気屋で浮き沈みの激しい夫と違い、ミシンの奥さんはいつでもカタカタと軽やかな歌声でドレスを縫っている。淡い色のサテンや、紺の別珍、柔らかな木綿や透けるレースの切れ端に埋もれるミシンの奥さんの体には、それはそれは美しい百合の花が象眼で刻まれている。それは時折、まだ昇りきる前の太陽を反射して、彼女の窓から軽やかな音とともにオパールの色をした光をこぼす。
蝙蝠傘が飛び疲れ、家に戻る頃、ミシンの奥さんもその日の仕事を終え、二人は仲睦まじく夕食をとり、互いへの愛について語らう。つまりミシンの奥さんは、夫の無骨な骨にはられた薄い蝋引きのシルクが形づくる妙なるカーブのすばらしさについて、を。蝙蝠傘は、仕事場の窓からもれる妻の歌声が、晴れた日に自分のピンとはった黒いシルクにどんなに軽やかに跳ね返り、そして美しく風にこぼれていくのかについて、を。二人は毎日語らう。毎日。
そして今夜も、二人はとても幸せな気持ちで眠りにつくのだった。