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アサガオの枯れた日

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アサガオを、枯らしてしまった。

 実家から持ってきて五年。毎年鮮やかな花を咲かせてきたのだけど、それも今年で終わりらしい。新しい種を買ってきて、また育てるという気にはならない。
 小学校のときに貰った、数粒の小さな種だった。それを、大事に大事に、しつこく育てていた。何の変哲もない、どこにでもあるようなそれ。毎年、花を咲かせては育てて、また咲かせて。

 枯らしてしまったのは、初めてだった。

 枯れてしまうと、何故毎年育てていたのかと馬鹿らしく思う。けれど、毎年ちゃんと咲いていたのだ。何故枯れたのだろう。水も肥料も、いつも通り。理由がわからない。今までと違うところなんて…。首を傾げて、ふと思いついた。


 今年の春、母が死んだ。

 直接の関係があるかと言えば、全く無いだろう。でも。

(このアサガオを綺麗というのは、母さんだけだった。)

 専門家ではないし、元の種だって小学校で貰った普通のアサガオのもの。それなのに、母は毎年これの咲くのを楽しみにしていた。綺麗だね、と笑っていた。
 緑の見えない鉢を引っくり返して、捨てた。
 ひどくあっけなく、毎年続けていたそれは終わりを迎えた。頬を、涙が伝っていた。



作品名:アサガオの枯れた日 作家名:しみこ