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カボチャ

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 村にカボチャが住みついた。村にひとつの教会の世話になっているようだ。
 ここの住人ときたら、来し方行く末、そういうものにまったく頓着しない者ばかりだったから、カボチャはあっさり住人に受け入れられた。
 教会の「悪魔」という名の黒猫はカボチャについて訊かれると
「いい奴さ。なにもしゃべらんが」
と答えた。
 実際カボチャはひどく無口で、たまに教会からの道を歩いている時、誰かに声をかけられても、少し笑ってうなずくだけだった。もっとも村にはここ何年も誰とも口をきかずに暮らしているかかしがいたから、カボチャはとりたてて変わっているとも思われず、むしろそのはにかんだような態度に住人は好感を持った。
 酒場の亭主、ミミズクはどういうわけかカボチャを気に入って見かけるたびに声をかけていた。彼の店では時々カウンタの端でホットワインを飲んでいるカボチャを見ることができた。
 ミミズクにいわせると、それでも彼は酔うと、重い舌の滑りが少しはよくなるようで、ここへ来る前はずっと南の海のそばにいたのだと話したことがあったそうだ。村人のほとんどは海というものを見たことがない者たちだったから、それを聞いた誰もが、未だ見ぬ海への憧れとともにカボチャを好ましく思った。そして無口なカボチャからいつか海の話を聞くことを考え楽しみに思った。
作品名:カボチャ 作家名:森林