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魔法少女リリカルマギカ(第1話)魔法少女大決戦(改)

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第7章 良いんじゃねえか



『ロストロギア事変』が終結し、
そして、まどか、と、さやかの二人が、『向こう側』に帰ってから、
約2ヶ月が過ぎていた。

現在、深夜の午前3時すぎ、
場所は見滝原の中心部から見てやや南西の郊外、
そこには魔獣の魔力反応を探索する3人の魔法少女の姿があった。

マミが杏子に尋ねる。

『佐倉さん、そっちはどうでしたか?』

『やっぱ、ぜんぜん反応ないわ。
 魔獣の魔の字も感じねえ。』

二人に、ほむらも同じ報告をする。

『こちらも、全く同じね。魔獣の魔力反応無し。』

『やはりキュゥべぇの推測通り、
 この前の、なんて言いましたっけ?
 ロストロギアがこの近辺の人間の負の感情エネルギーを、
 根こそぎ集めて吸収してしまったと言うことかしら?』

マミの疑問に、ほむらが、答える。

『こうも、長期にわたって魔獣の出現が見られない、
 と言う事はそう考えるしかないでしょう。』

『大掃除あとの、ピッカピッカの、きれいな部屋、
 みたいなもんか。』

そう。前回、『ロストロギア事変』があってから
ここ見滝原では現在に至るまで、
魔獣の出現がピタリと止まってしまっているのだ。

それは、マミの言葉にあるように、キュゥべぇの推測によれば
魔獣の発生源と言える人間の負の感情エネルギーが
サイコクリスタルと呼ばれるロストロギアの作用によって
吸収、集積されてしまったというのだ。

キュゥべぇの言葉を信じるならば、この見滝原では少なくとも、
あと半年程度は魔獣が出現しないだろうとのことだ。

これでは、魔法少女のチカラも宝の持ち腐れである。

『では、やはり以前話が出ていた通り、他の町で苦戦中の新人さん達の、
 援護および教育をしに行く事を、そろそろ考えた方がいいかも知れませんわね。』

『ええ、私からマホ連に連絡を取って、いつ頃、どの町に行くのが、
 一番良いか、確認をしてみるわ。
 巴さんは、引き続きこの町の状況確認をお願い。』

『分かったわ。』

ほむらの言うマホ連とは、魔法少女連合会の略称である。

今では魔法少女同士の相互協力の体制が整っている。

魔法少女連合会の主な仕事は、新人魔法少女の教育及び戦闘訓練、
魔力の使いすぎによる消滅という不幸を防ぐための、
余分なグリーフシードの回収と適切な分配、
苦戦中の魔法少女の援護、
そして油断の出来ない宇宙人であるインキュベーターの行動監視、などである。

改変前の宇宙において、ほむらがたった一人で、
残酷で悲しい戦いを続けていた時とはえらい違いである。

彼女は、自分の様な悲しい思いをする魔法少女は、一人も出したくは、なかった。

だからこそ、ほむらはこのマホ連の創設に関して人一倍、尽力したのである。

そして、いまではキュゥべぇたち、インキュベーターさえ説得し、
誰かが、魔法少女として契約する場合は全ての秘密を前もって当事者に教える事さえ、
彼らに確約させる事に成功したのだ。

これはある意味、奇跡的な出来事だったが、
ほむらは、親友の『希望を持つ事は、絶対に間違っていない。』と言う
信念を受け継ぎ、何年も、血のにじむ様な、努力を重ねて来たのであった。

そのため、彼女は魔法少女仲間から信頼される事となり、
周囲から魔法少女連合会の初代会長に推されたが、
自分はその器でないと、これを辞退している。

そして時空管理局との協力体制も、
始まったばかりではあったが、おおむね、良好といえた。

明日は、その関係もあって、
《フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官》と会うことになっている。

『それにしても。』

マミは、美しい夜空を見上げながら、別の話題を口にした。

『実体化して復活した、鹿目さんや、美樹さんと一緒に戦ったあの激戦も、
 2ヶ月も過ぎてしまうと、記憶と言うか、現実感があやふやになって、
 なんだか全てが夢だったような感覚になってしまいますわね。』

『.....』

『あ! ごめんなさい、暁美さん、変な事を口走ってしまって。』

『いえ。』

『ほんとに、ごめんなさい。』

マミは本当に自分は悪いことをした、と言うすまなそうな顔になった。

『でもさ。』

杏子が割り込むように、口をはさむ。

『もし、あの全てが、夢だったとしても、それはそれで、良いんじゃねえか。』

『え?』

『ものすごく、良い夢だったんだからさ。』

『そう。そうよね。』

3人は、しばらく黙って、見滝原の夜空を見上げていた。

『あ、そういや、』

杏子が再び、口を開く。

『明日の、夕方だったよな。フェイトとの約束は?』

『ええ。集合場所も、集合時間も変更は無し。
 人払いの結界もフェイトさんの方で準備するそうだから、
 私たちは、ただ遅刻しないように現地に行くだけよ。』

『なんだか、うれしそうね、佐倉さん。』

『おう。あいつとは模擬戦の予定を早く決めたいからな!!』

これには、理由がある。

はじめて、魔法少女らと、魔導師たちが出会ったあの日、
高町なのはが、うっかり口にした、
『 本気になったフェイトちゃんほどじゃないとしても、 』
と言う言葉を杏子がしっかり聞いてしまっていたからだ。

あれ以来、杏子はフェイトに対してライバル心むき出しで、結局
いつか全力の模擬戦をすることを、フェイトに約束させたのだ。

杏子と違いほむらは、出会った時からフェイトに何か
親近感に似たものを抱いていた。

彼女自身その理由は分からなかったが、
知り合ってから、1ヶ月程たったある日、
フェイトの出自と過去の経緯を詳しく聞いて納得がいった。

彼女ら二人の背負っているモノが、
同じではないとしても、ほぼ同質と言えたからだ。

聞いた話によれば、フェイトは、
事故で娘を失ったある母親によって造りだされた
いわゆるクローン人間の様なモノなのだ、と言う。

その母親は、フェイトを自分の道具として扱い、
本当の娘を生き返らせようとしたが、
それに失敗し、多くの多次元世界を崩壊の危機にさらすと言う次元犯罪を犯し、
その結果、一人で死んでいったのだ。

また、過去におきた別の事件の際、問題の、すでに死んだ娘が、
疑似的な仮想空間の人格データとしてではあるが、
フェイトの姉として出現し、姉と妹としての会話を行い、
その心に触れたそうである。

フェイトも、ほむらと同じく、
『この世界から去っていった誰か』の想いを、
背負っていたのである。

しかし、フェイトはほむらにこう告げた。

今の自分はとても恵まれていると。
現在の自分は、子供の頃からの友人である、
高町なのは、八神はやて、
そして、家族として迎えてくれたハラオウン家の人たちと、
多くの人間によって支えてもらっているのだと。

実際、誰かがフェイトについての話をする場合、
『疑似生命』とか『人工生命体』といった用語を使うと、
彼女の義理の兄や、今現在の母親が
『あの子は、れっきとした本当の人間です!!!』と言って、
怒り出すのであった。

『明日、フェイトさんと会ったら、
 何を話そうかしら?』

ほむらは、フェイトの事を思い出しながら、いろいろと考えたが、
考えは、なかなか、まとまらなかった。