魔本物語
「危険な目!?」
ファティマが目を丸くして飛び起きた。
「ご主人様が危険な目に遭ったの? 駄目じゃん気をつけなきゃ。これからはいつもボクと一緒にいるんだよ」
「僕を子ども扱いしないでよ。ファティマだって子供だし、ファティマが僕を守ってくれるの? 昼間だって僕らが捕まった時、なんの抵抗もしないで掴まってたじゃないか」
「ボクから見ればご主人様なんて赤ちゃんだよ。ボクこう見えても千年以上生きてるんだから。それにいざとなったボク強いんだよ」
「あ、あ、あのさ、今千年って言ったよね?」
「うん、千年以上って言った。う〜んとねえ、だいたい一三〇〇歳くらいだったかなぁ? いっぱい年取ると数えるのがめんどくさくなるんだよねぇ。ご主人様も年取ってみるとわかるよ」
セイはそんなに生きないから一生わからないと思う。だが、セイはファティマが千年以上も生きてることに心底驚いた。人は見た目によらないって言うけど、その言葉がぴったりだ。ファティマが嘘をついていなければの話だが。
セイは手を叩いてさっきの女性のことを思い出した。
「明日になったらある女の人を探したいんだけどいいかな?」
「女の人? ま、まさか、もしかして早くも外に恋人を作ってきたとか?」
「違うよ、犬男に襲われたのを助けてもらったんだよ。お礼言うの忘れちゃったし、もう一度会えたらいいなと思って」
「ほお、もしかして恋?」
「違うよ。とにかく明日になったらその人を探しに行くから。おやすみ」
セイは強引に話を治めてベッドに潜った。
今日はいろいろなことがあった。あっちの世界にいたら一生出会えなかった出来事をセイは体験した。
少し口元を緩めるセイ。そして、いろいろなことを考えているうちに、セイの意識は闇の中に落ちていった。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)