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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔本物語

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「あたしさ、実は怪盗やめてトレージャーハンターやろうと思ってるんだけど、坊やもあたしと一緒にお宝探し行かないかい?」
 アズィーザの表情も口調も今さっきとはガラッと変わって明るいものになっていた。
「お宝ですか?」
「そう、お宝。あたしの仲間になるっていうなら、取って置きの情報教えてやるけど、どうだい?」
「別に分けまいとかはいらないんですけど、その宝の話には興味があります」
「じゃあ仲間になるってことだね?」
「え、まあ、はい」
 アズィーザは自分の胸の間に隠していた一枚の地図を取り出した。
「これはこの辺りを記した地図さ。で、ここんとこにある×印に昔都市があったんだ」
「都市ですか?」
「〈黄金の都市〉ってのがあったらしいんだよ。今は砂の底に埋まっちまってるみたいだけどね。〈アウロの庭〉の黄金塔に大魔導師が住んでたって聞いたことないかい?」
 〈アウロの庭〉という言葉にセイは聞き覚えがあった。そして、はっとした顔をしたセイが声を荒げる。
「〈砂漠の魔女〉と呼ばれていた大魔導師ファティマの住んでいた都市ですか!?」
「その都市だよ」
「絶対行きます、絶対アズィーザさんについて行きます!」
「なんだい急に、さっきまでそんなに乗り気でもなかったのに……?」
「僕はそこに行かなきゃいけなんです」
 セイはバッグの中から焼け焦げた魔導書を取り出してアズィーザに見せた。
「その魔導書がどうかしたかい?」
「僕と一緒にいた猫人の少女を覚えてますか?」
「ああ、あの子はどうしたんだい? まだ一緒に旅してるのかい?」
「あの子はこの魔導書に宿る精霊ファティマ。大魔導師ファティマの記した〈ファティマの書〉に宿っていた精霊です」
 魔法についても精通しているアズィーザはすぐに悟った。
「それだけ魔導書が焼け焦げたら、あの子はもういないんだね……」
「はい……」
 セイは力なく頷いた。しかし、セイは希望が見えていた。〈黄金の都市〉に行けば、なにかが自分を待っているような気がしていた。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)