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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔本物語

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 だが、クラウディアもナディールも首を横に振った。そして、クラウディアとナディールが順に話をした。
「蒼風石を奪い、守るための戦争に多くの命が失われた」
「もし、ここで蒼風石が奪われれば、ラピュータは地に堕ちるでしょう。その子には悪いですが、わたくしはこの国の民を優先して守る義務があるのです」
「でもね、わたしは思ったことがあるのよ。蒼風石なんてなければいいのにってね」
 クラウディアは部屋の中央にある黒石の上に手を置いた。すると、どこからか人の合成音を聞こえた。
《ロックを解除するには、もう一人の認証が必要です》
 全員の視線がナディールに向けられた。
「わたくしは手をお貸しできません。その子を殺すなら殺しなさい」
 その言葉を受けてエムが槍を素早く動かした。
「止めて!」
 叫んだのはナディールであった。
 槍を離されたセイの首筋には紅い線が走っていた。
 すでに気高い皇族の表情を取り戻しているナディールがクロウディアの横に立った。そして、長い静寂を置いて、手をゆっくりと黒石の上に乗せた。
《王族二人を認証しました。ロックを解除します、この場から速やかにお下がりください》
 部屋中から歯車の動く音が聞こえ、クロウディアとナディールが黒石から離れると、床が動きはじめた。
 部屋全体が輝きだし、黒石を中心にして辺りの床に円形の線が走り、線の走った床が底からゆっくりとゆっくりと上がる。そして、半径二メートルほどの透明な筒状の入れ物が現れた。その中が淡く蒼く輝く巨石――これが蒼風石だ。
 部屋中に巻き起こる風がドーム状の部屋を休むことなく回り続ける。その風は立っているのもやっとのほどで、セイは地面に手を付いてしまうほどだった。
 エムは蒼風石を目の当たりにして笑みを浮かべた。
「まだ完全に封を切られてもいないのに、なんたる力じゃ。〈偉大なる人〉の脅威になることがよくわかる」
 槍を構えたエムが蒼風石の入れられた筒に向かって駆け出す。
 そして、槍は筒を貫かんとする風を切る。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)