魔本物語
それは絶対違うとセイは心の中で否定した。なぜなら、重装備をした男たちが窓から流れ込んできたからだ。銃火器を持ったその男たちはどう見てもファティマのファンには見えない。
男たち――治安官がいっせいに銃火器を構えた。
「手を上げろ!」
ファティマを含まない三人は困った顔をしながら手を上げた。
そして、ウィンディが叫んだ。
「逃げろ!」
声をあげたウィンディが手に持っていた何かを床に投げつけると、大量の煙が辺りを包み込んで治安官たちの目を眩ませた。その隙にウィンディがセイとファティマの腕を引いて玄関に走る。しかし、玄関が打ち破られて治安官たちが流れ込んできた。狭い廊下の左右から挟み撃ちにされてしまったのだ。
すでにクラウディアも治安官に取り押さえられ、三人はゆっくりと手を上げた。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)