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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔本物語

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「わたくしは常日頃から全ての人に救いを与えたいと思っておりました。しかし、この世界をお創りになられた神は人々を救わない。そして、わたくしは全知全能の神ではない。それが悲しくて堪りませんでした。ですがわたくしは〈混沌〉に出会い、悟りを得たのです」
 セシルは肩を震わせてくつくつと笑っていた。この時、セイにもファティマの脅えがわかったような気がした。
 怪盗ジャック――セシルの姉アリアが脅えた表情で叫んだ。
「セシル……アンタいったい何をしようとしてるんだい!?」
「この世界を全て〈混沌〉に還してしまえばいい。そうすれば、全ての感情は消え失せ人々は救われる。そう、わたくしは全てを無に還したいのですよ。ああ、そして、今わたくしの手元には〈ドゥローの禁書〉がある。今こそ〈ドゥローの禁書〉の真の力を使う時なのです!」
 〈ドゥローの禁書〉の表紙がセシルの手によってゆっくりと開かれた。その本の中身は塗りつぶされようにページが真っ黒で、その黒が蠢いていた。
 セシルの口元が微かに動いた次の瞬間、床で拘束されていたアリアの身体が〈ドゥローの禁書〉の中に吸い込まれてしまったではないか!?
「わたくしは姉を怨んではいませんでした。だからこそ一番初めに救ってあげたのです。さあ、次はあなた方を救って差し上げましょう」
 セシルが一歩踏み出したところでファティマはセイの腕を掴んで逃げ出した。
「セイ逃げるよ!」
「どうしてセシルさんが……?」
 セイにはセシルの考えが理解できなかった。とにかくセシルのやろうと止めなくていけないような気がした。けれど今は逃げることしかでなかった。
 廊下を駆け抜け、セイたちはとにかく聖堂の外に出た。そして、外に出たセイは目の前で聖堂が消えるのを見た。〈ドゥローの禁書〉は聖堂をも呑み込んだのだ。恐らく中にいた人々も一緒に呑み込まれたに違いない。
 聖堂が消えるのを目撃したものが他にもいた。その者は上空を旋回する翼の生えた馬ペガサスの上から聖堂が消えた瞬間を見た。
「あれが〈ドゥローの禁書〉の力か、おぞましき力じゃな」
 白銀の髪を夜風に揺らしながら少女は静かな月のように微笑んだ。
作品名:魔本物語 作家名:秋月あきら(秋月瑛)