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豊橋まりあ
豊橋まりあ
novelistID. 18949
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宵闇にて

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五:うつろううつろ


珍しくなんの細工もされていない眼帯を外し、その奥にある洞に唇を寄せると、彼はくすぐったそうに身体を揺らした。
「欲しいならやるぞ」
私の手元にある眼帯を指して彼が笑う。
「ワシの右目はいつでもお前のものだ」
「お気持ちは嬉しいですが」
「いらんのか」
「いただく訳にはいきません」
そう言って、眼帯を彼の手に返す。彼は再びそれで洞を覆うことはなく、彼にしては大層珍しいことに、乱雑とも言える仕種でそれを放りなげた。
「つまらんな。よし、今度お前が貰いたくなるような眼帯を作ってやろう」
「……前々から思っていたんですが。何故、そんなに拘るのですか」
私のせいだろうか、と自惚れめいたことを考える。彼は私の右手を優しくとって、眼帯の様に、その手で右目のあった位置を覆わせた。
「その奥に、右目があるかないか――考えさせるのが嫌でな」
よく言う。
右目でないところにまで、眼帯をつけようとする癖に。
「ならば殿は心ノ蔵にも虚ろをもっておられるのですか」
呆れて聞くと、彼は「なんだ知らなかったのか」と驚いた様な顔をした。
「そこを埋めるのもお前の役目だったはずだが」
気恥ずかしさに顔を伏せるが、彼は気に止めることもなく言葉を続けた。
「お前はワシの右目で、ワシの魂だ」
「……過分なお言葉、痛み入ります」
「ふん。『ワシ』は謙遜が過ぎて困る」
(伊達主従)

作品名:宵闇にて 作家名:豊橋まりあ