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物体もじ。
物体もじ。
novelistID. 17678
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幻想水滸伝ダーク系20題

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04 / 暗闇



 それは、身に馴染んだものだった。

 望む望まない、意識するしないに関わらず。

 馴染んだものでしか、なかった。





   初めて放り出された暗闇を、忘れることはない。

   どれだけの悲しみ、怒り、虚脱……何を伴うとしても、忘れることは出来ないし、そのつもりもない。





 だから長いこと、気づかなかったのだ。

 明るさを知らぬ者が、闇に、気付く道理もない。





   何しろ、初めてのその感覚……炎がすべてを焼き尽くし、誰もが彼方へと去って行った、あの暗闇の中。

   それでも彼は、光を見ていた。
   初めての、どんなものともちがう、黄金(きん) の光。

   彼の持つすべてを代価として贖ってもいいと思うくらいの、光輝。





 なのに、気付いてしまった。気付かされてしまったのだ。

 約束された安寧は、すでに遠く、長く知らずにいた光を知ってしまえば、それを見ないわけには、いかない。

 触れろとばかり、目の前に揺れるそれに、指を伸ばさないわけにも。





   だから彼は求めた。

   幼い心を制するものはなく、一途に、貪欲に、その光を。





 けれど、触れて、捕まえて、それでも、身に馴染むのは光では、なくて。

 あまりにも変わることなく、そのままで、ありすぎて。





   気付いた、その光。

   輝けば輝くほど、そこに集うのは、闇ばかりであり、それらを照らして、輝きは増す、ばかりで。





 求めても、手に入れても、馴染んだ闇が取り払われることなどは、ありえなくて。

 触れる光のあたたかさが、くるおしくて。

 自分のすべてを壊したいくらいに、いとおしくて。





   その輝きをのみこむ、闇に包まれた自分が、可笑しかった。

   その輝きを隠し、また一層際立たせることの出来る自分が、嬉しかった。





 すべてが去った今となっては、残されたのは。





   すべてを手放して、この今、自分を孕んでいるのは。





 狂おしく厭わしい、


   涙が出るほど静穏な、





光のない、暗闇。