痴漢冤罪
「だからなによ! あんたがバイの可能性もあるじゃない! たまたまこんな日曜日の朝に気まぐれで鞄の中に入れただけかもしれないじゃない!」
その発想はなかった。なるほど俺が両刀だと言いたいんだろう。なるほど、どうしたもんか、と考えていると電車のブレーキで慣性の法則を体感した。駅に着いたようだ。あぁ、ここでやっと終わりか。そして、俺はさっさと降りて逃げようとしたが、彼女が俺の手を強引に引き、
「ちょうどいいわね、このまま警察に行くわよ!」
周りの目も気にせず人ごみの中、俺を颯爽と引き連れていった。彼女は堂々としていたが、俺は興奮していたため前傾姿勢だった。
大きな建物が立ち並んでいる。そして、その間に公園。これでもかなり都会なんだなぁ、と改めて実感させられた。駅から大分離れたここで俺達は足を止め、そこにあったベンチに座った。
「で、どうだった?」
彼女は俺に尋ねた。無論俺が言うことは決まっていた。
「こんな羞恥プレイはこりごりだね、当分あの時間帯乗れないじゃないか」
快感をまだ感じていたため、少し体がぎこちないが、上手く笑えただろうか。さすがにMだとはいえ、性癖を叫び、ホモ雑誌を晒すというのはきつかった。でもやはり気持ちよかった。そこを、彼女は分かっていたようで、
「あら、ならこれからしばらくあそこで過ごさない?」
なかなか大きなラブホテルを指差し、そう提案したのだった。あぁ、今度は言葉じゃなく無知な俺に鞭をぶつけてほしいです。