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奴隷階級の一考察

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人権を剥奪されて育つ、という事を考える。それは絶望か、果たして希望か。
 例えば激情に駆られることはない。苛立ちもない。根本的な怒りの感情が、綺麗に抜け落ちている。何故なら家畜は人間様に対して楯突く事が許されないからだ。許されると思って生きていない。それは緩やかな諦観だ。凪のように穏やかで、時折細波を連ねるだけである。
 代わりに沸きあがる感情は何か。ただただ、悲しみだけなのではないかと思う。湛えた水のように寂しく孤独な自責の念だ。悪いのは他者ではない。私なのだ。奴隷の瞳と同じ、空虚な憂いに満ちている。
 つまり喜怒哀楽が欠けていて、なのに過剰なのが人権を剥奪されるということの真髄なのではないか。それは絶望か、果たして希望か。
 楯突く事を知らないから簡単に許してしまう。本来無用な仕打ちを受けても、穏やかな愛情が沸いてくる。手下はボスに絶対服従。未だにそう信じているわけではないが、根本は変わっていない。例えどんな理不尽にでも怒りを覚えることはない。だから、許す。だから、許していける。
 家畜や奴隷の心を持っていることは果たして絶望か、それとも希望か。本来ならもっとすべきことがあるのかもしれないと、鏡の水底を覗いて考えるが答えは出ない。
作品名:奴隷階級の一考察 作家名:霧谷眞也