出された手紙
手紙
拝啓
残寒の候、風邪など召されずにお過ごしでしょうか。
さて、先日は同窓会であなたと再会し、夢のように楽しい時間を過ごさせて頂きました。
みなさんの姿に十年の歳月を感じましたけれど、あなたの笑顔だけはあの頃のままでしたね。
私は多くの同級生と同じように就職をする際に地元を出ており、連絡を取っていたクラスメイトもおりませんでしたので同窓会参加を躊躇していたのですが、あなたに会えるかも知れないと思って出席を決意いたしました。
あなたもご存知の通り、私の学生時代は決して光り輝く記憶ではありませんけれど、制服姿のあなただけは今でも鮮やかな色を帯びています。
私のチョコを受け取ってくれたバレンタインデーを憶えていますか? 私はその時の心臓の鼓動まで思い出せます。
私が東京の会社に就職したのは、あなたが東京の大学に進学したからでした。休みの日には何度か大学の前まで行ってみたこともありました。もちろん、あなたには会えなかったし、そうしているうちに私はいつの間にか人妻になっていました。あなたも同じ頃に大学で知り合った女性と結婚されたんですよね。
でも、私はずっと違和感を覚えていました。もともと相手の勢いに押されて婚姻をしてしまったようなものでしたから。きっとあなたもそうだったのだろうと思います。
同窓会の席で夫婦生活が上手くいっていないと私が言うと、あなたは「ウチだって、いつも喧嘩ばかりしてるよ」と微笑みながら答えてくれましたね。その時に判ったのです。お互い、結婚する相手を間違っていたのだと。
今でもあなたはクラスの人気者だったので話せた時間はそれほど長くはなかったけれども、帰り際に半ば強引に住所を教えて貰ったのはこの手紙を出すことを決めていたからです。
私は夫を殺しました。もちろん、事前に準備をした上ですので死体の処理に関しては問題ありません。たとえ一部が発見されたとしても決して身元は判明しません。
ですので、あなたも奥さんを処分して貰いたいのです。解体や血抜きや捨て方は全てネットで公開されています。作業が完了したという返信を頂けましたら幸いです。
暖かくなりましたら、また笑顔でお会いしたいと願っております。
敬具