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ふざけんなぁ!! 7

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なんでもチャレンジというけれど(涙) 中編







カラオケボックスでは普通、フルフェイス・ヘルメットで入ってくる人間は、まず強盗に間違われ、店員に取り囲まれた上お断りされる。
どうしても入店したければ、大抵『脱いでください』と言われる筈。

壁にでかでかと掲げられている、お客に示された『当店の禁止事項』でも、大抵トップファイブに入っている項目だ。

だから、いざ皆で入店となった時、気遣い抜群なセルティが、入り口でもじもじと蹈鞴(たたら)を踏む羽目になった。

『本当に、私が入っても大丈夫か帝人? 邪魔なら帰ってもいいんだ。私はそういうの、慣れているから』
戸惑い心配げなセルティに、帝人は自信たっぷり、にっこりと微笑んだ。
「平気ですって♪」 

セルティを逃せる筈なかった。
彼女が横に居ると居ないとでは、新羅のやる気が全く違う。

「そうだ安心しろ。文句垂れやがったら、俺がきっちり腕づくで言い聞かせてやるからよぉ」
バキバキと指を鳴らす静雄にとって、彼女は親友兼、自分のお姉さん的ポジションな人だから。
彼の友人ヒエラルキー(階級ピラミッド)でも、トムと同レベルの『信じきってる、もしくは心酔している』最高段位に所属し、多分新羅より心に占めるウエイトが上な筈で、帝人を除けば、女性の知人ナンバーワンの扱いだろう。

そんな大事な女性が邪険にされるような集まりならば、静雄は間違いなくキレる筈で、勿論賢い帝人がそんな愚を犯す訳がなく。

「正臣が、話を通してくれてます♪ あいつは日頃チャラけてて軽そうに見えるけど、やる時はやる男なんです♪」
だって今日のカラオケ大会の場所も予約も、全て彼が手配してくれた。
案の定、帝人が手を引いてとことこと受付のあるロビーに行っても、セルティを見て『きゃー♪黒バイっ♪』とか騒いだり、『お客様ちょっと』と咎める店員は誰も居なかった。
皆偉い♪♪

「あの、20時から予約している竜ヶ峰ですが」
「はい、【将軍】から『くれぐれも頼む』と重々伺ってます。今日はモニターに参加くださいまして、誠にありがとうございましたぁ!!」

体育会系のノリな大声で、しかも深々と九十度の角度で20代前半の店員に頭を下げられ、帝人の方こそ恐縮してしまった。

この人、きっと黄巾賊のOBだ。

臨也に信者がどれだけいるか知らないけれど、こういう場面に遭遇する度、正臣も結構凄いカリスマを持っている奴なんだと自覚する。
こんな風に、過去のやんちゃな繫がりの筈なのに、現実の実社会でも立派に名前が通用しているのだから。

「そんな、お礼を言うのはこちらです。急な予約で、しかも結構無茶言ったのに、全部無料なんて。本当に特別室使っちゃっていいんですか?」
「勿論です。面白そうな企画ですから、後日メニュー会議に出してみたいと思います。それに俺、【将軍】には過去随分と世話になりましたから。今後もあの人とずっと繋がっていたいですし。最後にアンケートを書いていただく事になりますが、それさえきちんとしてれば、オーナーにも顔が立つし、店の誰も文句言わないでしょ。雇われですが俺、一応ここの店長なんです」
「うわぁい♪♪ ありがとうございます♪♪ そんなのこっちだって、お安い御用ですよ♪」
「はい、ではどうぞこちらへ」

九人が案内されたのは、30人ぐらい楽々座れそうなソファーが入った、広くて真新しい特別室だった。
その上香ばしい揚げたてなチキンやポテトフライ等のジャンクスナックから、サンドイッチやパスタにピザやサラダなどの軽食、カルパッチョや伊勢海老の香草焼きに寿司、それからローストビーフ等のちょっと手の込んだ料理まで、一人頭3500円相当のパーティメニューがテーブル一杯に並べられていて、引き連れてきたセルティを除く七人からも歓声が沸いた。
勿論夕飯がまだな腹ペコ帝人も、鳴りそうなお腹を押さえるのに必死だった。

「コースは三時間歌いたい放題。後あちらにある簡易バーに用意してあるソフトドリンクまたはカクテルも、セルフサービスですが全て飲み放題になります。それとデザートの件ですが、今直ぐお持ちしますか? それとも一時間後になさいますか?」
「一時間後で♪」
勝手に決めてしまったけれど、食に関しては譲れない。
帝人は食事とデザートは、お行儀よくきっちり分けたい派だった。
「それではどうぞ、ごゆるりと」
店長が一礼して消えた途端、皆も各々わらわらと動き出した。


「おーい、乾杯のファースト・ドリンクは、皆、とりあえずビールでいいか? それともハイボール(ウイスキーをビールで割った飲み物)にするか?」
早速門田が引っ張り出したビールの中ジョッキグラスに、どんどん生ビールを注ぎ淹れている。そんな中、静雄もすたすたと簡易バーへと向かった。

「帝人が未成年だろが馬鹿。ノン・アルコールのカクテルをロング(グラスのサイズ。一番長い)で適当に作るが、他に欲しい奴いるか? とっとと言え」
「はーい、俺、【スクリュードライバー】欲しいっす」
「私、【マルガリータ】!!」
「静雄、もしココナッツ・ミルクがあるなら、私は【チチ】が飲みたい♪」

遊馬崎、狩沢、新羅……、彼らに遠慮という文字は無かった。
帝人用にと早速、ピーチジュースとレモンと氷を、シェーカーに放り込んでいた静雄の額に、ぴきぴきと青い血管が浮かびあがる。
「……てめぇら、全部ベース(カクテルの元になる味)が違うじゃねーかよぉ……、ああ、ったく面倒くせぇ!!」

とか言いつつ、ぶす剥れながらもきっと、三人の分も律儀に作るのだろう。
両手を使い上下で銀色のシェーカーを押さえ持ち、基本通り、シャカシャカと軽快な音を立てながらシェイクしだした静雄の立ち居振る舞いは、本当に絵になるように格好良くて。

「ふふふっ、静雄さんって、素敵で優しいんだから。もう大好き♪」
見蕩れつつぽつりと呟いた帝人の無意識の独り言は、ばっちり野性並みな聴覚を持つ静雄の耳に届いたようで。
みるみる今度は真っ赤になった、とても可愛い彼の顔を、セルティがウキウキとデジカメで激写した。

『今日の私は、皆のカメラマンだ♪』

歌えないし、飲み食いもできないセルティだったけれど、彼女は皆が集まり、わいわい楽しむ仲間に加わるのが好きだった。

ちなみに現在、彼女はこっそり自前のプログで【平和島静雄を幸せにする会】というのを立ち上げ、その会長を務めている。
運営はもう二ヶ月になるらしいが、会員は現状、岸谷新羅たった一人だけ。
その他の人間が入会すれば、漏れなく臨也の嫌がらせの標的にされるという、まるで参加したら最期の、地雷を踏むような恐ろしい場所らしい。

正臣の家のパソコンから、ダラーズの掲示板をチェックした時にも『見るだけにしておけ。あそこはやべぇ!!』と、家を放火されただの、ヤクザに因縁をつけられただの、男なのに見ず知らずのマッチョ男にいきなり犯されただの、会社を突然クビになっただの、書き込まれた内容が、何処まで本当か判らないが悲惨で凄かった。

でも皆、怖いもの見たさがあるのか、閲覧の人数は日を追って上昇し、今は一日のべ1000人が覗く、注目サイトになっている。
静雄は破天荒だが見目は良いし、切れやすいが性格も善良だ。
作品名:ふざけんなぁ!! 7 作家名:みかる