呪いの人形
俺の友達の中でも、群を抜いてバカな友田が、俺の部屋に、いそいそと上が
りこんできた。
「なんだよ!うっせーな!フライドチキンの皮でも拾ったか?」
「バッカ!ちっげーよ!」
今さら、そんな事をしても遅いのに、友田は、俺の耳に口を近付け、キョロ
キョロと周りを見回した。
「誰も居やしねーよ。で、何拾った?」
「拾ったんじゃなくて、貰ったんだよ」
「だから何を?」
「…呪いの人形…」
友田は、小声でそういうと、凄まじいまでのドヤ顔をして見せた。
「は?呪いの人形?」
「声が、でかいっ!」
友田は、自分の口に中指を立てて言った。
「それを、やるなら、人差し指だろーが!ケンカ売ってんのか?」
「そうだっけ?」
「それで?変な婆さんに、藁人形と五寸釘でも貰ったか?」
友田は、ちょっと驚いた様子だった。
「良く、婆さんって、分かったな?」
「んなもな、お約束だ」
「でも、藁人形じゃないぞ。何で出来てるのか分からない」
そういって、友田が取りだしたものは、見かけは泥人形といった感じだった。
「何だ?こりゃ?」
「まぁ、触ってみろよ」
それは、泥人形などではなかった。持ってみると、全く崩れそうな感じはし
ない。強いて言うなら、粘土に近かった。
「…で、これで、どうやって呪うんだ?」
「それがさ…。あっ、お前の髪の毛、1本くれ」
「何だ?お前、俺を呪うってのか?」
「大丈夫。大丈夫。人形を大事に扱えば危険は無いって、言ってた」
「まっ、いっか。どうせ、効きゃしねぇんだから」
「じゃあ、まあ、1本」
「で、どうすんだ?」
「簡単だよ。この髪の毛を人形の中に入れるだけ」
「ずいぶん簡単だな」
「…こ…れ…で…、良しっ!」
「…何も起きないぞ」
「まぁまぁ、これで、何か尖った物…、シャーペンの先でいいや。…で、人
形の脚をつつくと…」
「痛てー!」
俺は、今、人形がつつかれた場所を抱えて、床に転がった。
「…す、凄いだろう…」
明らかに、予想外という顔をしながら、友田は言った。
「お前、これ、シャレになんねえぞ!」
「…みたいだね。」
「とにかく、今すぐ、髪の毛を取り出せ!」
翌日
鑑識の警察官が慌ただしく、指紋をとったり、写真を撮ったりしている中、
一人の刑事が遺体に掛けられた白い布をまくりあげ、渋い顔をしている。
そこに、一人の男が近づいていった。
「どうだ?ガイシャの様子は?」
「あぁ、警部。酷いもんです。恐ろしく鋭利で巨大な刃物で、腹をパックリ
割られています」
(おしまい)