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吉野ステラ
吉野ステラ
novelistID. 16030
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FAアニメ派生集

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第十一話<大切なことは>




  
  
生命の誕生
今まで実感なくその言葉を口にしていた
俺は何もわかっていなかった。
人間は、俺たちは
母親の胎内の中で大切に包まれ、そして
母親の苦しみや願いのもとに生まれてくる
いつくしまれて

知らなかった
俺たちはそうして産まれてきたんだ

そんなことも知らなかった俺に
人間なんて創造できるはずがない
なんて畏ろしいことをしていたのか
ましてや 母親をもう一度なんて

俺たちの母親は あの母さん ただひとりしかいなかったのに





ああ、無性に大佐の声が聞きたい。
(大佐―俺、大切なことを学んだよ)
そう言ったら、あいつは目を伏せて静かに笑うだろうか。
もう随分と、あの声を聞いていない。ヒューズ中佐に言われた後も、結局電話できなかった。
急に南に来ていること、もう中佐から聞いているだろうけど。
(明日は師匠の家へ行くから、今夜ぐらいしか電話できない…)
そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。



『マスタング大佐はこちらにはいません』
「え?」
まだ日が沈んだばかりの時間なのに、もういないなんて珍しい。
「もしかして非番?」
『そうではなく…こちらに在籍しておりません』
「は?そこ東方司令部だよな?」
『はい』
「マスタング大佐、いるだろ?」
『ですから……大佐は異動されました』
「異動!?どこに!?」
『それはお伝えできません』
「だいたいでいいから!東部のどっか?それとも他の地域?」
『ですから、軍の情報はお伝えできません』
「こっちだって報告義務があるんだよ!」
『ですが、例外的な措置についての申し送りは大佐から聞いておりませんので。用件がおありでしたらこちらで受けて伝言します』
「だーっもういい!」



どういうことだ?大佐が東にいないなんて…。
急に胸が苦しい。
いつだって電話すれば、あの声が迎えてくれたのに。
(やぁ鋼の。久しぶりじゃないか―)
そう言って、いつも飄々と心地よい声で。
「くそ…」
心にあった何かが、急にひとつ抜け落ちた気がする。
この胸騒ぎはなんだろう。何かが起きている?
ヒューズ中佐に電話しようかと思った。中佐なら間違いなく中央にいるはずだから。

だけど、思いとどまった。
俺は、まだ自分のやるべきことをしていない。
思い知ったじゃないか。俺たちの知らないことがまだこの世の中にたくさんあるということ。
まだ、連絡はできない。

あいつに何かあれば、俺はわかる。
まだ、大丈夫だ。
あの生命の強さを、俺は信じているから。
「よし」
早く手がかりをみつけて
あいつの顔を、声を―

  
作品名:FAアニメ派生集 作家名:吉野ステラ