迷羊館の数奇な人々 序章
明治時代に造られたらしいそれは、赤レンガで覆われていて蔦まで絡み付いている始末。
最近になって、風変わりな青年が「喫茶店を開く」といって買い取ったらしい。
しかし、肝心な"開店〝しているところを見たという人は居ないそうだ。
いや、正確にはしているのだ。
明かりが灯っていないだけで・・・
なぜそんなことを知っているか?
それは、オレがその喫茶店に通う常連客の一人だから、さ。
ん?未だ疑問があるって?
あぁ、営業していないはずなのになぜ入れるか・・・それは店長が硝子張りの玄関から路面を見てて、常連のオレらや面白そうな客が来たときだけ開けるのさ。
そんなことで、営業していけるのかって?
大きなお世話。っていいたいとこだけど、店長のお気に入り候補のお前を追い出したらオレまで追い出されるからなぁ・・・しかたねぇ教えてやるよ。
店長の掛け持ちしてる仕事が、小説家なんだけど意外とヒット飛ばしててなそっちで稼いでるようなもんだがすこーし後ろ暗いっちゃぁ暗いな。
まぁ、そのお陰で俺らの一風変わった趣味やら生い立ちやらプライベートが守られてる訳だから口出しできる立場じゃねぇし。
言いかた変えれば、オレら常連は店長に弱みを握られてるような感じ?
でも全然、、脅したりしないし見た目カッコいいのに気取ってねぇしそれに・・・
はぁ?煮え切らない?
仕方ねえだろ、素直に言うのって恥ずかしんだから。
要するに、懐が広いっつうか人として憧れるのに、ふとした瞬間儚げに見えたりして・・・
あー、ほら笑う。
だから言いたくなかったんだよお前には、
素直じゃない?
それこそ大きなお世話だっつうの。
ってーかさぁ、お前もここで働いてんだからそれくらい知ってんだろ?
アルトくん
そう。おれの名前は葉月有都(ハヅキ アルト)だ。
決して、ユウトとは読まない。
今月、ひょんな事からこの喫茶店「迷洋館」(迷う羊の館と書いてメイメイカンと読む)でバイトとして働くことになった。
でも、そんなに店長のことを知らないおれとしては不安なわけでショタコンもとい少年愛好家の常連さんに危険を侵して聞いてみたというわけだ。
え、危険を冒す位ならば聞かなければ良い?
ご冗談を、いいですか?
ここの常連さん変態もとい奇人しか居ないんですよ。
共依存しあう店長とその義理の弟。男装の麗人というか性同一性障害の美人。死体愛好家のウエスタン野郎。
変態なのに、奇人なのにっ!みーんな顔だけは良いってどーいうことですかっ!?
20×20の原稿用紙一枚にまとめて教えてくださいよっ
というわけで、物語の幕開けです。
嗚呼、デザート(ラブコメ)ではほろ苦い物と甘い物両方ご用意しております故ご心配なく。
作品名:迷羊館の数奇な人々 序章 作家名:でいじぃ