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コンビニへ行こう! 後編

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エピローグ  恋人は相変わらず




そろそろ、付き合いだして一ヶ月を迎える。
竜ヶ峰帝人は、商品整理をしながらそのことについて考えてみた。相変わらず挙動不審にあたりを伺いつつ、そわそわと帝人のバイトが終るのを待っている恋人は、いまいち押しが足りないけれど馬鹿みたいに帝人のことが大好きだ。
そりゃもう、分かりやす過ぎて微笑ましいほどに。
土曜日の早朝、コンビニはいつにもましてお客さんが居ない。その内ここ潰れるんじゃないか、なんて思うのだけれども、不思議とこの辺のコンビニの中でも売上トップ5には入っているのだそうだ。時間帯によって客数に波がありすぎるよなあ、と毎回思う。
さて、そんなことよりも今は臨也のことか。
時計の針は、後五分ほどで帝人のバイト時間終了を指す。雑貨の棚を整理し終えた帝人の目にふととまるのは、下着やハンカチなどの生活用品にまぎれてひっそりと棚に並んでいる……きっぱりはっきり言ってしまえば、コンドームの箱である。
その箱を見て、臨也を見て、もう一度箱に視線を戻す。


……一ヶ月、たつんだよなあ。


なんだかとても感慨深いものがあるのだが、あの嵐の日、結局臨也はキス以上のことはしなかった……いや、できなかったのか。何しろあの後、処理能力を超えたらしく熱を出してぶっ倒れたのだから。そんな臨也なので、二人の中はなかなか進展しないのであった。
まあ、ざくざく進展されても困るんだけどね。でも一ヶ月かあ。
未だに、恋人は帝人を抱きしめることさえぎこちない。というか、なんで抱きしめてもいいですかと正座していちいち尋ねてくるのだろうか。許すと答えるのも照れる。帝人は何事か考えつつもその棚の前からどき、大急ぎでゴミ捨てに向かいながら、雑誌を読むふりをしている恋人をもう一度ちらりと見た。
今日は、実を言うと、取っておきのネタが一つ、あったりする。




「臨也さん、お待たせしました!」
「お、お疲れ様っ!」
決められた時間より、今日は五分オーバーでタイムカードを切った。帝人がバックヤードから走って出てくると、すでにコンビニの外に移動していた臨也が、ばあああっと表情を明るくして出迎えてくれた。
犬のようだ。しっぽをちぎれんばかりにふっている感じの。
「今日は何食べに行きますか?」
「うん、あのね、今日はっ、色々と計画が、その、デートだし!」
ぐっと手のひらを握りしめる様子は大変意気込みに溢れている。だがしかし、ここで一つ帝人ははっきりさせなきゃならないことがあるわけで。
「計画ですかー、楽しみですねー」
「期待していいよ!……た、たぶん」
「ふーん、期待ですかー。それって例えば、ラブホテル的な?」
「ラッ……!?」


何をおっしゃいますか帝人さん!?


あんぐりと口を開けた臨也が、驚愕の表情で帝人を凝視する。
まあそうでしょうね、と帝人は笑いながら、臨也の顔を覗き込んだ。
「僕の友達が、薬局でバイトしてるんですよね、品出しの」
「や、薬局……?」
「臨也さんのマンションのすぐ近くの」
「え!?」
「お前の彼氏がコンドーム買ってったぞ気をつけろ!って、昨日電話が」
「最悪だぁああああ!」
「そうですねえ、できればそういうのは、売上になるしうちのコンビニで買ってくれればなおよし、だったんですけど」
「そういう問題じゃないよね!?」
そんなまさか、帝人のレジでそんなモノを買えるわけがないだろうに!っていうか、っていうかバレバレだったなんて!
「し、死ねる……これは死ねる……!」
うあああ、と頭を抱えた臨也に、我慢していた笑いが思わずこぼれた。帝人はしゃがみ込む臨也の頭をよしよし、と撫でたりしている。まるで犬に対する態度のようだ。
「そ、そのまえになんで、俺が帝人君の彼氏だって、知って……!?」
「え?だって、写真見せましたし」
「なっ、なんで、いや嬉しいけど!嬉しいけどなんで!?」
「自慢したかったからに決まってるじゃないですか」
「自慢?」
じまん。ジマン?
……え?
俺を?
帝人君が?
「っは!?いや、え?あの、俺が君を自慢するなら分かるけどっ、君が!?」
なんで!?と心底不思議そうにしている臨也である。そんな臨也を、帝人は呆れたようにみやった。
相変わらず、帝人のことを天使か何かだと思っているらしい臨也は、よくこういう事を言って帝人をためらわせる。なんというか、せっかくの二枚目なのにどうしてこれほどまでに自信を持たないのだろうか。黙って笑っていれば、本当、王子様みたいなのになあ、と。
中身は相変わらず、残念のままだ。
「でも僕、ちょっと安心したんですよ?」
首を傾げて帝人は、まだしゃがみこんだままの臨也に併せてしゃがんでみた。目を合わせると、かすかに頬を赤くして視線を彷徨わせる様子も、相変わらず。
「だって臨也さんなかなか手出さないし、キスだけで反応するくせに押し倒そうとしないから、耐えることが快感のドMなのかと……」
「やめて心が痛い!」
「ごめんなさい、ちょっといじめました」
「ドSぅうう!」
「はいはい」
撫で撫で。本気で泣き出しそうな臨也をもう一度撫でて、帝人は明るく微笑んだ。
「さ、行きましょうか。デートなんでしょう?時間がもったいないですし」
「……う、うん」
ぐすりと涙を拭いて、ふらふらと立ち上がる臨也。
その腕にしがみついて、そしておなじみの黒いコートのポケットに手を突っ込んだ。
「コレの出番は夜まで待ちましょうね?」
コレって、アレだ。
所謂、こんどーさんと呼ばれるヤツ。
「えdrtyhじょあp@;sd」
なんでポケットに入ってるってバレてるんだ!?とか、いやその前に出番は夜って何、いいってこと!?そういう事なの!?
パニックに目を白黒させる臨也のその顔を見ていると、帝人はいじめたくってうずうずしてしまう。こんな自分を天使だなんて、臨也の感覚はよくわからない。どちらかというと悪魔なんじゃないかって思うんだけど、まあそのへんの感覚は人それぞれなので。
帝人は笑う。
この人がどんな顔をして自分を押し倒すのか、とても興味があった。



「愛し合いましょ、臨也さん」



愛することは一人でできるけど。
愛し合うのは二人じゃなきゃ、できないからね!

作品名:コンビニへ行こう! 後編 作家名:夏野