海竜王 霆雷11
竜の父親も人間の義父と同じように勧めてくれた。ゆっくりと、自分は、家族に溶け込むだろう。わからないことは、美愛に聞けばいい。
「父上、母上、いい加減に返してください。霆雷は、私の背の君です。」
強引に、自分を父親から取り上げる美愛が、可愛いと思う。必要とされることが、とても嬉しい。これから、美愛とも、その関係を作っていく。これから、これから、自分には、長い時間がある。飽きることなどないだろう。ただの欠陥商品だった人間の自分は、必要とされ家族を持つ竜になった。
・・・・やりたいように、好きなようにやる。それだけでいい。・・・・
「でもさ、美愛。しばらく、エッチできないのは問題かな? 」
何気無く、そう言ったら、父親に背後から殴られた。
「それは、人前で言うことじゃない。」
「いってぇー」
「背の君、そういうことは、私と二人の時におっしゃってください。いくらなんでも、両親の前は、いかがなものかと思います。」
顔を真っ赤にして、スタスタと美愛は、小竜を抱いたままに逃げ出した。さすがに、閨のことを両親に聞かせるのは恥ずかしい。そして、逃げ出した庭で、「あなたがやりたいようにしてくださいな。」 と、笑い出した。
「はあ? 」
「最後まではできなくても、触れたいとおっしゃるなら、私は構いませんよ。」
「それ、俺のほうが欲求不満になるんじゃないか? 」
「どうにかなるでしょう。二百年なんて、あっという間です。」
「そうだな。・・・・美愛、一緒にずっと居ような。」
「はい、傍から離れません。」
小さくなって抱き上げられている自分を包んでくれる体温が嬉しい。温かくて、安心するものだ。こんなものがあることすら知らなかった自分は、人間として不幸だったかもしれない。竜になって、ようやく、それを手に入れた。
だから、ここで、やりたいように、好きなように、自分は生きていけばいい。それだけのことだ、と、彰哉だった霆雷は、そっと目を閉じて、美愛の心音を聞いている。
たぶん、これが、一番欲しかったものだ。