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学園を制し者 第一話

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「……はぁ……はぁ……」
(……流石にきつくなってきた)
俺は階段の影に身を隠し、息を潜める。
俺が今いるのは屋上につながる階段。普段は立ち入り禁止の場所だ。
風紀委員と生徒会は血眼になって学園内で俺を探し回っているのだろう。
俺、いや俺たちは、とある任務で生徒会&風紀委員に追われているのだ。
『どこへ行った!?』
『まだそう遠くへはいってないはずだ!』
『探せ! 探せ!』
聞きなれた風紀委員の声をひやひやと聞きながらやつらの行動を探るためさらに聞き耳を立てる。
(……狭山と健太はうまく逃げたのかな?)
俺は今回の共犯である二人を思い浮かべた。
まぁ、奴らなら大丈夫だろう。
狭山の行動は俺でも予測がつかないし、健太は陸上部からスカウトが来るぐらい足が速い。
それよりも問題は俺が逃げ切れるかどうかだ。
俺が逃げ切れなければこの作戦の意味がなくなってしまうのだから……
「おい、奴らは見つかったのか?」
『か、風見山副会長! いえ! 奴らは依然、逃走中です』
「奴らは今この学園の重要機密を握っている。なんとしても捕まえろ」
『はい』
(生徒会副会長様が出てきたのか……)
今まであいつに何度苦渋をなめさせられたことか。
あいつが出てきたのなら、ここが見つかるのも時間の問題かも知れない。
俺は手に握られたこの学園の重要機密の感触を確認しながら次の作戦を頭の中で逡巡した。
「この階段の上は調べたのか?」
『は?』
「この上は調べたのかと聞いている」
『い、いえ』
(……やばいな)
俺が思考し終わる前に、俺の隠れている場所がばれてしまいそうだ。
見えていないはずなのに、風見山の威圧感を猛烈に感じる。
「なぜ調べない?」
『し、しかしここは……生徒会風紀委員合同『学園征服部策対策本部』のすぐ裏ですよ……こんなところに奴らがいるとは……』
「………………」
『え、えと……』
俺は無駄だとわかっていながら全力で気配をけしてみた。
「生徒会、風紀委員を召集しろ! ねずみはここにいる!」
『は、はい!』
(くッ! 無駄に勘のいいやつめ!)
俺は勢いよく立ち上がり、階段を駆け上がる。
そしてあらかじめ作っておいたマスターキーを使って屋上のドアを開け放った。
「……はぁ……はぁ……」
屋上には誰もいない。
まぁ、鍵がかかっていたのだから当たり前なのだが、
俺は息を整えながら屋上の状態を一通り確認した。
ホンジツモ晴天ナリ、太陽がさんさんと俺を照らしつける。
風が少し肌寒いこの季節にはちょうど暖かかった。
『突入!!』
『『『うぉぉおお!!』』』
そうこうしているうちに、肩に風紀委員の紋章をつけた生徒が十数人ドアから勢いよく飛び込んでくる。
「………………」
俺は仁王立ちで奴らを迎え入れた。
人数を見る限り、きっと風紀委員の班か何かだろう。
『動くな!!』
一人の風紀委員の生徒が俺にいきり立つ。
どうやら、こいつが斑リーダーのようだ。
『お前にはもう逃げ場がない! おとなしくお縄につくんだな!』
「………………」
俺は仁王立ちしたまま俺を取り囲んでいる十数人の風紀委員を睨みつける。
『いい加減そのダサい仮面をとったらどうだ? 新井!』
「だ、ダサいっていうんじゃねぇよ!!」
俺は顔につけているヒーロー型仮面のずれを直した。
これは顔がわれないようにと狭山に渡されていたものだ。
仮面といってもお祭りで見るようなちゃちなものではなく、プラスチックで出来ており。
目のところはサングラスで使うような偏光板が埋め込まれている
ちなみに色はレッド。
はじめはつけるのに抵抗感があったが、使いなれた今では愛着がわいている。
「……それに新井というのはいったい誰のことだ?」
『………………』
風紀委員たちの鋭い視線を軽く受け流しながら俺はおどけて見せた。
「はぁ……お前はいつまでそんな浅はかなことを言っているのだ……」
凛、としたよく通る声が風紀委員たちの後ろから聞こえてきた。
声が合図だったとでもいうように風紀委員たちが道を開ける。
(……風見山か)
風紀委員の間から一人の女子生徒が出てきた。
ポニーテールにくくられた黒く長い髪の毛がさらさらと風に揺れている。
彼女の名前は『風見山 楓(かざみやま かえで)』生徒会の副会長だ。
身長は女の子としては大き目の160中盤ぐらい、まっすぐと姿勢が正しいので余計に大きくみえる。
スカートからは長く細い足が伸びているのも彼女が大きく見える一因だろう。
「ふっはっはっはっは! 生徒会副会長殿がじきじきにお出ましとは……貴様らも必死だな!」
「……いい加減その芝居がかったしゃべり方をやめんか……新井」
風見山は人差し指と親指で目頭を押さえている。
「しかし、風見山嬢よ……俺ばかりを狙っていてもいいのか?」
「何がだ?」
「俺の仲間が何人かいただろう。そっちはほおって置いてもいいのか?」
「そんなことはどうでもいいだろう」
「………………」
あわよくばこいつらから狭山と健太の情報を得てやろうかと思ったが、そう簡単にはいかないようだ。
「それより、盗んだ物をさっさと返せ」
「盗んだものとは……これかな?」
俺は制服の内ポケットから例の極秘情報を取り出して掲げた。
「お前らが欲しているのはこの学園長のカツラかぁあ!!」
『『『「………………」』』』
風紀委員の諸君&風見山からの視線がいたい。
…………いや、俺だって好きでこんなものを盗んでるわけじゃないんですよ。
これが今回の依頼の品なのだからしょうがない。
心の中で誰にも聞こえるはずのない言い訳をしながら、風紀委員と風見山のシラーっとした視線をモロに受け止める。
やがて、風見山があきれたように俺に問いかけた。
「……そんなものを盗んでいったいどうするつもりだ?」
「そんなことを教えてやる必要があるのか?」
俺はとぼけてみた。
ていうか俺も何に使うのか知らない。
今回の任務を持ってきた狭山は何も教えてくれなかった。
「いい加減にしろよ。新井!」
「はて、新井とはいったい誰のことだ?」
「………………」
(……まずいな)
風見山の雰囲気が変わった。いい加減、頭にきているのだろう。
「……ではお前は新井ではないと言うのだな?」
「あ、ああ……」
半端じゃない風見山の威圧感に、俺は一瞬気おされてしまう。
「では、仕方ない……」
風見山は『お前がわるいのだからな……』とつぶやきおもむろに木刀を取り出した。
「ちょっ! 風見山さん? ぶ、武器は反則じゃないでしょうか……?」
いったいあんな長いものをどこに隠し持っていたのだろう。
「仕方あるまい、何者かわからん以上、貴様はこの学園の不審者、危険人物だ! 危険人物は武力行使で排除するのがこの学園のしきたり」
「ず、ずいぶんと物騒なしきたりだ……」
「――になればと、私は常々思っている」
「お前の願望かよ!」
実は、この子の方が俺よりも危険なのではないだろうか……
「まぁ……そんなことはどうでもいい」
「よくねぇよ! 木刀をこっちに向けるな!」
「問答無用!」
「ひっ!」
風見山は一息で俺まで詰め寄り、木刀で横なぎに一閃。
作品名:学園を制し者 第一話 作家名:hirooger