しろの話。クロの話。
左と右、両方に1人ずつ。
少し不思議だったけど、その日は眠ってしまった。
朝起きると2人は消えていた。
またある時、街中を歩いていると2人がいた。
また両端に1人ずつ。
1人は草原が似合いそうな真っ白なワンピースに、ふわふわの栗毛のロングヘアー。
1人は細身の黒いスーツに、真っ黒なシャツと靴。髪も真っ黒で短髪。
ワンピースの人は幸せそうな笑顔で踊るように歩いていた。
スーツの人は眉間に皺を寄せ、苛々しながら携帯相手に怒鳴っていた。
きっとこれからも2人は僕の視界に出てくる気がした。
だから僕は、2人に名前をつけた。
ワンピースの人はしろ。スーツの人はクロ。
そう呼ぶねと2人に伝えたが、2人は何も言わなかった。
それから2人は度々現れるようになった。
クロはいつも苛々していた。
しろはいつも笑顔だった。でも、時々泣いていた。
2人の声は、いつも聞こえない。
2人と僕が出会って1年が過ぎた頃、初めて2人が互いの存在に気付いた。
しろが泣いているのを見て、クロが話しかけたらしい。
クロがこちらを向いた。
「部屋に連れて行くぞ。いいな。」
知らない誰かの声が、した。
クロはしろの手をとりこちらに向かってくる。
近付くにつれ、か細い泣き声も聞こえてくる。
クロが隣を通る。
「これからはこっちでもよろしくな」
こうして、しろとクロは僕のところに住むことになった。
そんな2人の日記や言葉を僕がサイトにまとめてみている。
僕ら3人はすごく不思議な関係だけど、最近とても楽しい。
作品名:しろの話。クロの話。 作家名:さかな