CROSS 第12話 『救出』
「来るんじゃありませんでした……」
妖夢はすっかり汚れた自分の服を見て、がっくりとした様子でそうつぶやいた……。
「これが戦場だ。幻想共和国の連中は平和ボケしているようだな」
「何か言いましたか?」
「別に」
山口はそう言うと、立ち上がった。妖夢は無傷だったが、山口の左足に切傷ができていた。今の爆発で飛んできた破片がかすったのだろう。
ミサイルランチャーがあった場所には、爆発による穴が空いており、その近くにいたはずの肉塊は、無数の肉片となって壁や床に飛び散っていた……。さっきまで肉塊の影となっていたところに、出入口らしい扉が見えた。幸い、もうそのフロアに敵の姿は無かった。
「じゃあ、さっさとこんなところから出るか」
「言われなくても」
山口と妖夢は、一応辺りを警戒しながら、その出入口に向かっていった。
「いて!!!」
山口は歩き始めた途端、足を押さえた。どうやら、足の切傷が痛むようだった。
「……手伝いましょうか?」
やれやれといった感じで、妖夢が肩を貸そうとしたが、
「後で笑い話にされてたまるかよ」
山口はそう言って、助けを断ると、ゆっくりと出入口に向かって歩き出した。
ガシャーーーン!!!
そのとき、山口と妖夢のすぐ横に、大きな石材が上から落ちてきた。そして、また石材が上から落ちてきて、割れて半分になっていた壺を粉々に砕いた。
「……次はなんですか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!
床だけでなく建物全体が振動し始めた。どうやら、山口が天井を落としたときと今の爆発の衝撃で、この建物自体が崩壊し始めているようだった……。
「……これはヤバいな」
山口はそうつぶやくと、痛みをこらえながら足を早めた。しかし、振動と痛みで思うように前に進めないみたいだった。
見かねた妖夢がまた肩を貸そうとしたが、山口は断った……。
「これで死んだら、もっと笑い話になりますよ」
妖夢がそう言うと、山口はあきらめた様子で左肩を支えてもらうことにした。振動は大きくなったり小さくなったりを繰り返しており、大きな振動が起こるたびに、建物のどこかで崩れる音がする。
作品名:CROSS 第12話 『救出』 作家名:やまさん