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VISION 1-2

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「なが」
春はドアに目をやった。わずかに涼の声が聞こえるが、はっきり聞き取れない。
「うーん」
気になってきたので、廊下に出た。
「いつまで話してんだよ」
涼は反応せず、電話に集中していた。
「はい…まあ協力ならある程度のことは…。
 そうですね。はい…」
「はいはいじゃ分からん」
そうして5分後、話が終わったらしく、携帯がパタリと閉じられた。
「で、どうなったの」
「大変だぞ、テロ行為かもしれない」
「なにそれ!警察がそんなこと言ってんのか!?」
「たぶん明日には新聞の一面に、そう載ると思う。
 今の時点で1万人以上が、俺らみたいな体験をして病院に行ってるらしい」
「てことは俺たちも病院に行かされるのか」
「だろうな」
「なんとまあ…」
二人はこの先を想像した。
想像の中で専ら共通したことは、「面倒なことになる」である。
「俺はいいからおまえ行ってこいよ」
「そう言うと思った」
「だから人が少なかったのか」
二人とも納得した。


「ちゃんとノート取っとけよ」
「はいはい」
「絶対取らないだろうけどな!」
「ふっ」
涼は講義を途中で抜け、そのまま病院へと向かった。
「さて」
春は席に戻った。ノートは取らなかったが。


「おーい、ちょっと」
講義が終わると、先ほど会話を交えた友人を引きとめる。
「おまえら俺が夢見たことは誰にも言うなよ」
「なんで?」
「国の命令で病院行かされるかもしれないから」
「まじ?それめんどいな」
「でしょ。涼はついさっき自分から行ったけど」
笑いが起きた。
「どんだけクソ真面目なんだよ」
「いやいや、俺らが無頓着なだけ。じゃよろしく」


他の学生たちも、夢についての会話を交わしている。
ぼーっとしているうち、春の周りには誰もいなくなった。
そしてちょうど、校内放送が流れる。
「校内にいるすべての教員、学部生、院生に緊急連絡があります」
「あー…」


放送内容は涼の予想通りで、
地震の夢を見た者は、直ちに医務室前に集合し、バスで医療センターに向かい、診察を受ける、とのことだった。
7階の廊下から中庭を見下ろしてみると、
医務室前に並ぶ長蛇の列があった。
「もうあんなに並んでんのかよ!」
大学には生徒だけでも1000人を超え、
普通に睡眠を取っただけであの夢を見るとすれば、
本当に大事件なのではないか。
春もここまでになると、先ほどまでの余裕はあっさりと消えた。


「どうしよ」
空っぽの教室でうなだれ、30分が経過した。
春には涼のような行動力はなく、一向に判断ができなかった。
送迎バスは昼1時半に出発する。現在13時である。
春は空想を広げる。
このまま何もしなければ、脳がおかしくなって洗脳されてしまうのだろうか。
しかし、病院に行ったところで進展はあるのだろうか。
ただの偶然ではないのか。
偶然でないとしたら、やはり何者かが意図的に、
「…」
春は眠ってしまった。
作品名:VISION 1-2 作家名:みつや